レインツリーの国

11月21日(土)公開 TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー

メールで知り合った彼女には秘密があった

レインツリーの国

 向坂伸行は大阪出身で、今は東京の食品メーカーで営業として働いている。たまたま実家に戻ったとき、本棚で見つけたのは高校時代に愛読した小説「フェアリーゲーム」の上巻と中巻。大好きな本だったのに、下巻がどうしても見つからない。下巻の内容を思い出そうと、信行はネットで情報を検索してみる。そこで出会ったのが、「レインツリーの国」というブログだった。自分の大好きな小説を、同じように好きだというブログの管理人に信行はメールを出し、やがて相手からの返事が届く。これをきっかけに、信行とブログ管理人「ひとみ」のメールによる文通が始まった。見ず知らずの相手からのメールを待ち焦がれるようになった信行は、ひとみに「会いませんか」というメールを出す。彼女からの返事はOKだった。初めてのデートの日、張り切って出かけた信行は、彼女がメールでは明かさなかったある「秘密」を抱えていたことを知りショックを受けるのだった……。

 『阪急電車 片道15分の奇跡』(2011)や『図書館戦争』シリーズ(2013〜2015)など映画化作品も多い有川浩の同名小説を、『阪急電車』も手掛けた三宅喜重監督が映画化した青春ラブストーリー。主人公の信行をKis-My-Ft2の玉森裕太が演じ、ヒロインの人見利香を西内まりやが演じる。原作は未読なのだが、映画は「自らの境遇にコンプレックスを持っているヒロインが、運命の男性と出会って美しく生まれ変わる」というシンデレラ物語なのだ。映画の終盤でヒロインが次々に服を試着して大変身する場面は、『プリティ・ウーマン』(1990)みたいで楽しい。この映画のユニークな点は、女性の視点で描かれているシンデレラ物語を、男性の視点から読み変えていることだ。目立たず地味な灰かぶり姫に、王子はなぜ恋をしたのか? それはメールを通じて、彼女の内面を知っていたからだ……。しかし僕はこれにまったく説得力を感じられない。

 映画はひとみが自分自身の殻を破って新しい自分へと生まれ変わっていく姿を、時間をかけてていねいに描いている。だがこの映画は信行の視点で物語の大部分を綴っているくせに、信行がなぜひとみに心惹かれるようになるのかをまったく描けていない。恋愛映画は主人公たちが「恋に落ちる瞬間」を、観客にきちんと見せなければならない。この映画の中で、ひとみが信行に恋しはじめる場面は隠されている。それは信行とメールをしている間のことだったのだろう。とりあえず、そう考えておけば話は済む。だが信行の行動は逐一映画の中に描かれているため、信行がひとみに恋をする瞬間がないという問題はごまかしがきかない。映画の中には、いろいろな説明がある。伏線も張ってある。しかしそれらがパチリと音を立てて噛み合う、決定的な瞬間がこの映画の中にはない。 信行は恋しているわけでもない女の子にあれこれ世話を焼く、親切で優しい関西弁の王子さまなのだ。

TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン5)にて
配給:ショウゲート
2015年|1時間48分|日本|カラー|ビスタサイズ
公式HP: http://raintree-movie.jp
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4164040/

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