復活

5月28日(土)公開予定 ヒューマントラストシネマ渋谷ほか

イエスの復活だけを描く異色の聖書映画

復活

 西暦33年のユダヤ。ローマ軍の司令官クラヴィウスは、総督のピラトに呼び出されてある仕事を命じられる。それは今まさに処刑場で十字架に磔になっているひとりの男が、確実に死んだことを確認することだ。処刑場に着くと、男は既に息絶えていた。処刑されたのはナザレのイエス。念のために脇腹を槍で突いてとどめを刺し、遺体は生前イエスの支持者だった男に下げ渡された。だが彼の仕事はまだ終わらない。今度は死体が盗み出されないよう墓を見張れというのだ。イエスは生前「自分は死んでも3日目に復活する」と弟子たちに告げていたらしい。その言葉が成就したように見せるため、弟子たちが死体を盗み出すかもしれない。クラヴィウスは墓の中の遺体を確認すると墓穴を厳重に封印し、部下に墓の見張りを命じる。だがその翌日、墓からイエスの死体はこつ然と姿を消した。番兵の目を盗んで、誰が死体を持ち去ったのか? クラヴィウスの捜査がはじまる……。

 イエス・キリストの処刑に立ち会ったローマ帝国の軍人が、墓から消えたイエスの遺体を捜索するうちに驚愕の事実を知るという物語。歴史ドラマであり、聖書映画であり、素人探偵もののバリエーションだ。エピソードは新約聖書の福音書や使徒行伝から拾っているが、断片的な挿話のまとめ役として、聖書には登場しないローマの軍人を出してきたのがこの映画のアイデアだろうか。キリストの受難に立ち会って人生を変えてしまった男の物語という意味では『ベン・ハー』(1925、1959)や『聖衣』(1953)に近く、ローマの軍人が主人公というアイデアは、『クォ・ヴァディス』(1951)の影響もあるだろう。キリストの伝記映画は山ほど作られているが、復活にのみ焦点を当てているのがこの映画のユニークな点。何しろ主人公が最初にイエスに出会った時、当の本人は既に十字架の上で死体になっているのだ。これは聖書映画として他に類をみないものだ。

 誠実な映画ではあるが、過去の聖書映画に比べずっと小粒な作品であることは否めない。主演のジョセフ・ファインズ以外は、俳優の格がぐっと落ちるのだ。せめてピラト役には、もう少し大物の俳優に出演してほしかった。それでもこの映画には、作り手のいろいろな意欲が込められている。例えばイエスの呼び名が、「ジーザス」ではなくアラム語の「イエシュア」になっている。日本語字幕では「イエス」になっているが、こうすることでイエスを「神様」の座から「平凡な名のユダヤ人男性」に引き下ろしているわけだ。またイエスの十字架刑も、処刑場所が風通しの悪そうな切り通しで、十字架のサイズや高さも処刑に必要十分なギリギリの高さ。処刑は流れ作業で行われる。そこには神々しさや崇高さなど微塵もない。これが「史実」だとは思わないが、映画の中ではこれがじつにリアルな場面に仕上がっている。聖書の読み方に、新鮮な視点を与えてくれる映画だと思う。

(原題:Risen)

SPE試写室にて
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2016年|1時間47分|アメリカ|カラー|2.35 : 1|ドルビーデジタル
公式HP: http://www.fukkatsu.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3231054/

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