シン・ゴジラ

7月29日(金)公開 全国ロードショー

誰も観たことがなかった新しいゴジラ

シン・ゴジラ

 東京湾アクアラインでトンネルの崩落事故が起き、周囲の海水が沸騰・変色しはじめる。政府は海底火山の出現か熱水の噴出によるものと判断するが、現場からネットにアップされた映像には未知の巨大生物が記録されていた。やがてその姿をテレビカメラがとらえ、政府は対応に追われることになる。あまりの巨体ゆえに水中から出られないと見られたその生物は、都内の河川を遡上した後に想定外の上陸を果たす。だがそれは無数の建物を破壊するだけで、数時間後には何もなかったように海に戻って姿を消した。その後、巨大生物はさらに大きさを増し、直立二足歩行しながら鎌倉に上陸。ゆっくりと都心部に向けて歩み始める。かねてからこの生物の出現を予告していた研究者の資料に基づき、この巨大生物は「ゴジラ」と呼ばれることになった。内閣官房副長官の矢口蘭堂は、各部署から優秀な人材を集めてゴジラ対策にあたる。その間にもゴジラによる被害は拡大していく。

 『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明が総監督を務めた新作ゴジラ映画だ。過去のゴジラ映画の続編ではなく、巨大怪獣の存在などまってく想定していない日本に、ある日突然巨大な未知の生物がやって来るという物語になっている。東京に本当にゴジラが現れたら、それに政府はどう対処するのか? 自衛隊はどう動き、日米安保はどうなるのか? こうした政治シミュレーションこそが本作のコンセプト。そのため会議の場面がやたらと多い。登場人物もやけに多く、有名俳優が演じているので顔は覚えられても、役名や肩書きまではとても記憶できない。この映画では「個人」が問題とされず、国を動かしている「統治機構」そのものが問題とされているのだ。こうした物語の切り取り方自体が、この映画をこれまでにないまったく新しいゴジラ映画にしている。ここで浮かび上がってくるのは、日本型の民主主義、米国との同盟関係、国際社会の中での日本といった諸問題だ。

 映画はどうしようもなく、庵野秀明の個人的な趣味嗜好や美意識を反映した作品になっている。物語のつながりとしては過去のゴジラ映画を無視しているのだが、映画の随所に過去のゴジラ映画に使用された伊福部昭の楽曲を使用しているし、『エヴァンゲリオン』から引用した曲も劇中で繰り返し使われている。こうした各種の引用が、誰にでも明らかに引用とわかる形になっているのがこの映画の特徴だ。それが映画に異化効果を生み出し、「作り事」である映画を、観客が「作り事」として楽しむ仕組みになっている。観客は常に映画から一歩引いた冷めた視点で、虚構としての映画に向き合うことになる。登場人物に感情移入しながら物語に没入することで得られる、体が震えるような興奮と感動を期待する人もいるだろう。残念ながらその手の人にとって、この映画は物足りなくて退屈な作品かもしれない。だがここにも間違いなく、ワクワクする映画的な興奮と感動がある。

109シネマズ名古屋(スクリーン7/IMAX)にて
配給:東宝
2016年|2時間|日本|カラー
公式HP: http://shin-godzilla.jp
IMDb: www.imdb.com/title/tt4262980/

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