いきなり先生になったボクが彼女に恋をした

11月3日(木)公開予定 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

中途半端なラストシーンが残念

いきなり先生になったボクが彼女に恋をした

 親の期待に反してひとり日本で働いている韓国人の青年イ・ヨンウンは、会社の業績不振で雇用契約を打ち切られ、同棲中だった恋人にも捨てられて、出張先の沖縄で途方に暮れていた。そんなヨンウンに声をかけたのが、外国語学校を経営する中年カップル。開講直前に韓国語講師に逃げられたふたりは、代わりの講師になりそうな人材を探していたのだ。うっかり彼らの口車に乗ってにわか講師になったヨンウンに、教室の中でもひときわ熱心に講義を受ける生徒・山城さくらの視線が突き刺さる。シングルマザーの彼女は「韓国語ができる」という実態にそぐわない触れ込みで旅行会社に勤めてしまったあと、正社員になろうと必死に韓国語を学んでいたのだ。そんな彼女に、来日する韓国の大口見込み客を接待する役目が降りかかる。学校の授業だけではとても時間が間に合わず、クビになってしまう。困り果てたさくらは、ヨンウンに休日を使った個人レッスンを申し込んだ。

 ヨンウンを演じるのは、韓国の歌手で俳優でもあるイェソン。シングルマザーのさくらを演じるのは佐々木希。監督と共同脚本を兼務するのは、『武士の献立』(2013)や『愛を積むひと』(2015)の朝原雄三。『釣りバカ日誌』シリーズの終盤(シリーズ16〜22作目)を支えた今どき珍しい職人的監督だが、今回の映画は正直あまり出来がよろしくないと思った。よろしくない理由は、端的に言えば「すべてが中途半端」だからだ。例えば物語の舞台になっているのは沖縄。しかしこの映画では、物語の舞台が沖縄である必然性がほとんど感じられない。その地域の名所や名物を紹介した観光映画にもなっていないし、地元の人々の暮らしを丁寧に描くローカル色の濃いご当地映画にもなっていない。映画の背景としては沖縄の風景が出てくるが、この物語は別に沖縄を舞台にしなくても成立するだろう。物語の基本はラブストーリーだが、これも訴求力不足で弱々しい。

 主人公たちが互いに好意を持っていることはわかる。それは外国語学校の講師と生徒という関係から、信頼できる友人関係を経て、やがて男女の恋愛感情に変わるのだ。だが話はそこまで。この映画は主人公たちが恋愛感情を育んでいく関係を十分に引っ張っていないから、映画のラストシーンが煮え切らない歯切れの悪いものになってしまう。これはハッピーエンドなのだろうか? それともアンチハッピーエンドなのだろうか? 主人公たちの未来に、恋人同士になったり結婚したりという可能性はあるのだろうか? それとも話は、ふたりの関係をまたゼロから作り直していくことになるのだろうか? 観客は曖昧な気分のまま、映画の外側に放り出されてしまうのだ。もちろん映画のラストを曖昧にして、観客にその後を考えさせる映画があっても構わない。しかしこの映画は、そういうタイプの映画なのか? この物語はきちんと「めでたしめでたし」で終わってほしかった。

第29回 東京国際映画祭(特別招待)
TOHOシネマズ六本木ヒルズ(スクリーン5)にて
配給:松竹
2016年|1時間38分|日本|カラー
公式HP: http://www.ikinarisensei.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt5877060/

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