マダム・フローレンス! 夢見るふたり

12月1日(木)公開 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー

NY音楽界を支えた歌姫は絶世のオンチだった!

マダム・フローレンス! 夢見るふたり

 1944年のニューヨーク社交界で、音楽家たちのパトロンとして知られる資産家フローレンス・フォスター・ジェンキンス。定期的に音楽愛好者たちのためのコンサートを主催し、演奏家や歌手たちのために気前よく資金を援助する彼女自身にも、かつてはプロの音楽家になりたいという夢があった。だが家庭の事情や彼女自身の身に起きた不幸な出来事によって、若くしてその夢は断たれてしまったのだ。そんな彼女を献身的に支えるのは、夫のシンクレア・ベイフィールド。音楽をこよなく愛する彼女が本格的な歌のレッスンを受けたいと言いだしたときも、彼は音楽教師や専属の伴奏ピアニストを捜し出すなど精一杯の支援をする。だがひとつ大きな問題があった。フローレンスの歌は、聴くに堪えないウルトラ音痴なのだ。しかもそのことに、本人はまったく気づいていない。にもかかわらず彼女は得意気に歌を録音し、カーネギーホールで独唱会を開くことを決めてしまう。

 メリル・ストリープ演じる主人公のフローレンスは、現在でもカルト的な人気を持つ実在のアマチュア歌手だ。生前に録音された歌曲集は、現在も発売されている何種類かのCDで聴くことができる。ヒュー・グラントが演じた夫のシンクレアや、ピアニストのコスメ・マクムーンなども実在の人物。映画の冒頭にも「実話に基づく」という但し書きが出ている。ただしすべてを実話そのままに再現しているわけではない。物語はフローレンスがカーネギーホールでリサイタルを行う1944年の出来事になっているが、これは彼女の晩年10数年間のエピソードを1年に集約したものだ。「超音痴のアマチュア声楽家がなぜか大人気」という実話をもとに、そこに実在のエピソードも含めて自由に肉付けしていったのだろう。物語はフローレンスその人より、彼女を必死に支えようとするシンクレアの視点に多くの比重を置いているように見える。しかしこの人物が、よくわからない。

 映画を観ていても、シンクレアのフローレンスへの愛情が腑に落ちないのだ。彼がフローレンスと出会った時、彼女は彼より7歳年上でもう40歳過ぎの中年女性だった。夫婦は事情があって結婚当初からセックスレス。夫のシンクレアは、妻が寝付いたあとは若い愛人が待つ別宅に戻るのだ。愛の形は一様ではない。いろんな夫婦がいてもいいだろう。でもこんな風変わりな夫婦が固い愛情で結ばれているのだと、観客誰もが納得できるエピソードが映画序盤にほしかった。でないとシンクレアが、妻の財産目当てに彼女と一緒にいるように見えてしまうのだ。これはヒュー・グラントという俳優が、調子はいいが不誠実で信用のできない男を過去に何度も演じてきているせいもある。ひょっとすると映画の狙いとして、この夫の不穏な下心や卑しい金銭欲を描く意図があったのだろうか? それならそれでいろいろ腑に落ちる点もあるのだが、その意図が成功しているとは思えない。

(原題:Florence Foster Jenkins)

109シネマズ名古屋(シアター9)にて
配給:GAGA
2016年|1時間41分|イギリス|カラー|2.35:1|ドルビーデジタル
公式HP: http://gaga.ne.jp/florence/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4136084/

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