古都

11月月26日(土)公開 京都先行公開
12月3日(土)公開 全国ロードショー

原作小説「古都」のヒロインのその後を描いた作品

古都

 千重子は夫の竜助とふたりで、京都の老舗呉服店の暖簾を守っている。老舗と言っても小さな店だ。経営は苦しく、古くから付き合いのある職人の廃業に心を痛めることもある。時代の変化は、古い町にも着々と押し寄せているのだ。そんな千重子にとって心の慰めになっているのは、一人娘である舞の存在だ。舞は大学卒業後に地元で繊維を扱う商社に勤め、将来店を継ぐための見聞を広めることになっている。こうして娘のための道を作ってやることが、老舗を守る親の務めでもあるのだ。だが舞自身は、子供の頃から親の決めた人生のレールを歩むことに息苦しさを感じていた。京都ではこうした生き方を、まったく疑うことなく受け入れる跡取り世代も多い。だが舞の心には、大きな疑いと迷いが生まれている。千重子は娘のすぐそばにいながら、それに気づかないのだ。千重子には別の家で育った双子の妹・苗子がいるが、彼女もパリに留学中の娘との関係に気をもんでいた。

 川端康成の原作小説は過去に2回映画化されている。中村登監督の松竹版『古都』(1963)では、岩下志麻が主人公の八重子と苗子を二役で演じた。1980年の東宝版では市川崑監督作で、主人公は山口百恵の一人二役だった。今回の映画では松雪泰子がやはり一人二役で八重子と苗子を演じているが、過去2作とは趣向を変えて、今回は「原作のその後」を描くオリジナルストーリーになっている。回想シーンとして八重子と苗子の過去の交流、つまり原作「古都」の内容がさらりと描かれているが、映画の中の今現在の時間の中で八重子と苗子が出会うことはない。物語は八重子と舞、苗子と結衣という2組の母娘の物語が、交わることのなく並走する構成になるのだ。しかし「古都」の読者や過去の映画作品を観ている人にとって、これは「古都」の映画化と言えるのだろうか? 「古都」の続編を作るのであれば、20数年ぶりの八重子と苗子の再会を描いてほしかった。

 絵はがきや観光ポスターのように美しい京都の風景が、次から次へと惜しみなく登場する。構図もガッチリと決まりすぎたアングルの連続だ。最初のうちは「そうだ京都、行こう!」的な気分で映画を観ているのだが、それがあまりにも続くとうっとうしくなってくる。京都の風景がいちいちウザイのだ。昔ながらの町屋の暮らしなども、やり過ぎなほどに古色蒼然としていてほとんど時代錯誤。とにかくいちいち、京都が押しつけがましいのだ。これが映画の狙いだったとは思わないのだが、結果としてこれがヒロインの舞にまとわりつく「京都の老舗の看板」の重苦しさとリンクしてくる。しかしそうしてできた橋本愛の京都青春編は、暗くて、重くて、ちょっと勘弁してほしい物語だった。それよりずっと面白く観られたのは、成海璃子のパリ留学編だ。留学先で煮詰まってくる結衣の物語には、ハリウッドに留学したYuki Saito監督の実体験が投影されているのかも。

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン7)にて
配給:DLE
2016年|1時間57分|日本|カラー|シネスコサイズ
公式HP: http://koto-movie.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt5811338/

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古都」への1件のフィードバック

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