ブルゴーニュで会いましょう

11月19日(土)公開 Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

ぶどうとワイン作りを通して再生していく家族

ブルゴーニュで会いましょう

 シャルリはフランスでも有数のワイン評論家。毎年発行される彼のワインガイドの評価次第で、ワイナリーの経営が左右されるほどの強い影響力を持っている。その最新版の出版パーティーで、彼は魅力的な女性と知り合って一夜を共にする。彼女は彼に忘れがたい印象を残すが、その後起きた大事件でこの件は後まわしになってしまった。シャルリの実家であるワイナリーが、経営不振で人手に渡りそうなのだ。銀行はシャルリの父の経営にサジを投げたが、別の有望な経営者が見つかるなら1年間は競売にかけるのを猶予するという。父やワイナリーの仕事を嫌って家を飛び出したシャルリだが、ことここに至っては逃げようがない。シャルリ自身がワイナリーの後継者として、ワイン造りをするしか道はない。とりあえず1年で窮地を抜け出さねば。そんな彼の前に現れたのは、隣のワイナリーの跡取り娘ブランシュ。だが彼女こそ、あの日シャルリと一夜を過ごした女性だった。

 物語自体は完全に予定調和で、意外性は微塵もない。傲岸不遜なワイン評論家は実家に戻ってワイン造りに打ち込むことで、家族の絆と故郷への愛、そして家族の絆を取り戻す。素人ながら工夫を凝らして作ったワインは幸運なことに出来も良く、ワイナリーは経営危機を脱する。一夜を過ごした運命の女性にはアメリカ人の婚約者がいたが、これも紆余曲折の末に最後は無事結ばれる。映画を観る人のすべてが期待し、これ以外の結末を許さないであろう着地点に、映画はきちんと着地してみせるのだ。めでたしめでたし。意外なところは何もない。多少のハラハラドキドキはあっても、先が読めるからそれほどの深刻さもなく、最初から最後まで安心して映画を観ていられる。物語だけを取り出せば、手垢の付いた陳腐なものかもしれない。それでも映画が最初から最後まで楽しく観られるのは、四季折々のブルゴーニュの風景の美しさと出演している俳優たちの魅力によるものだ。

 誰よりもまず、頑固親父を演じているジェラール・ランヴァンが素晴らしい。ブルゴーニュで長年暮らし、その土地の景色の一部になってしまっているかのような男だ。これと同じぐらい魅力的なのは、ブランシュを演じたアリス・タグリオーニ。彼女もまたブルゴーニュを離れては生きられない女性であり、彼女との関係があればこそ、シャルリは父と和解できたのかもしれない。シャルリを演じたジャリル・レスペールも悪くはないが、ランヴァンやタグリオーニに比べると役へのはまり具合で負けてしまったかもしれない。物語を動かしていく主役がやや弱いというのが、この映画の小さな傷になっている。ところで主人公の父がワインを作れなくなったきっかけは、妻との離婚であったらしい。しかしその原因が、映画の中で明確に描かれていない。「家族がいなければワインを作る意味がない」という話なのに、家族は離れたまま。これがフランス映画のリアリズムなのかな。

(原題:Premiers crus)

伏見ミリオン座(ミリオン3)にて
配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム
2015年|1時間37分|フランス|カラー|シネスコサイズ|サウンド
公式HP: http://bourgogne-movie.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4796568/

Premiers Crus
Premiers Crus

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