弁護人

11月12日(土)公開 新宿シネマカリテほか全国ロードショー

国家の暴虐にひとり立ち向かう弁護士

弁護人

 高卒ながら苦労して法曹資格を取り、判事になったソン・ウソク。最初は物珍しさで注目されたものの、学歴重視の法曹界では出世の目がない。ならば弁護士として事務所を構え、徹底的に稼ぎまくるまで。目をつけたのは、当時ブームになっていた不動産登記の仕事。目論見は当たって、ウソクの事務所には連日客が押し寄せてきた。不動産ブームが一段落すると、今度はすぐに税務関連に鞍替えして大儲け。稼いだ金でヨットまで買い、ウソクの弁護士人生は文字通りの順風満帆だ。しかしそんな彼の事務所に、若い頃から世話になっている食堂の女主人が駆け込んでくる。大学生の一人息子ジヌが1ヶ月以上も行方不明になっていたが、公安事件の被告として数日後に裁判にかけられるという通知が届いたのだ。拘置所でジヌと面会したウソクは、彼の体中に拷問の痕が残っていることに衝撃を受ける。ウソクはジヌの無実を確信し、国家相手の難しい裁判に挑むことになる……。

 韓国で100万人を動員したという大ヒット作。主人公ウソクのモデルは、2003年から2008年まで韓国大統領だったノ・ムヒョン(盧武鉉)だ。映画はノ・ムヒョンが1981年に担当した釜林(プリム)事件の弁護を軸に、高卒で苦労した末に不動産や税務関連の弁護士として成功した男が、国家権力相手に戦う人権派弁護士へと生まれ変わっていく姿を描く。扱うのは1978年に主人公が弁護士として開業してから、民主化運動を行う人権派弁護士として活躍する1987年まで。モデルとなったノ・ムヒョンはこの翌年に政界に進出するので、この映画は彼の弁護士時代の全体をほぼ丸ごと映画化していることになる。おそらく映画の作り手たちはノ・ムヒョンに何らかの共感を抱き同情しつつも、彼が一番輝いていたのは政治家に転向してからではなく、韓国民主化のために戦っていた弁護士時代だったと言いたいのだ。まあ政治家としての彼はイロイロとなぁ……。

 映画は前半と後半の二部構成。前半は主人公が苦労の末に弁護士として成功するまでを描き、後半は主人公が無実の罪で逮捕された大学生たちを弁護する法廷ものだ。だがドラマとしての面白さは、断然前半部分にある。貧しい境遇から苦労して弁護士になった主人公は、本人が貧しさを知っているがゆえに経済的な効率を優先する弁護士になる。妻や子供たちに生活の苦労をかけたくないし、学歴がないことで他の弁護士から差別されたくないからだ。その彼が、なぜ貧しい大学生が被告になった公安事件の弁護を引き受けたのか。この心境の変化を描くことにこそ、この映画のドラマの中核がある。映画の中でも素晴らしいのは、主人公の貧しさとみじめさを描く無銭飲食のエピソードだ。馴染みの食堂で食い逃げをした主人公は、急激な酔いと自分自身への嫌悪感から嘔吐する。このどん底の状況にしっかりした説得力があるから、その後のすべてのエピソードが生きてくるのだ。

(原題:변호인)

センチュリーシネマ(センチュリー2)にて
配給:彩プロ
2013年|2時間7分|韓国|ビスタ|サイズ|5.1ch
公式HP: http://www.bengonin.ayapro.ne.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3404140/

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