ヒッチコック/トリュフォー

12月10日(土)公開 新宿シネマカリテほか全国順次公開

名著「映画術」を補完する作品

ヒッチコック/トリュフォー

 1966年。ヌーヴェルヴァーグを代表する映画監督のひとりフランソワ・トリュフォーが聞き役となり、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックを相手に長時間の取材を行ったインタビュー本「Hitchcock/Truffaut」が発売された。日本では「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」のタイトルで知られるこの本によって、アメリカでは職人的な娯楽映画の監督と考えられていたヒッチコックは世界的な「映画作家」のひとりとなる。またこの本は、これから映画監督を目指そうとする世界中の若者たちにとってのバイブルとなった。この映画は当時の取材に使われた録音テープや写真をもとにして歴史的なインタビューを再現すると共に、完成した本の中ではスチル写真で取り上げられているヒッチコック作品の名場面を映画の引用という形で補完している。さらにスコセッシを筆頭とする10人の映画監督たちが、この本の影響について語っている。

 これは「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」の読者やこれから読者になろうとしている人なら、一も二もなく飛びつかずにいられない映画だと思う。ここには「映画術」がどのように成立したかという裏話もあれば、ヒッチコックとトリュフォーの肉声によって再現された「映画術」のさわり部分もあり、さらにスコセッシやウェス・アンダーソン、デヴィッド・フィンチャーなどの映画監督たちが「映画術」をどのように読んだかというエピソードも盛り込まれている。日本語字幕を担当しているのは、「映画術」の訳者のひとりでもある山田宏一。これは書籍版「映画術」を補完するような、見事な映画になっているのだ。「映画術」の中で紹介されている作品スチルはモノクロだし、それほど画質がよくないものも多い。しかしこの映画では実際のヒッチコック作品からインタビューで話題になっている場面を引用し、ヒッチコックとトリュフォーの解説付きで見せてくれる。

 これはヒッチコック映画の名場面の数々を、監督自身のオーディオコメンタリー付きで見せてくれるような映画なのだ。なんという贅沢なことだろうか。書籍版「映画術」の中でも『めまい』(1958)や『サイコ』(1960)の解説は面白い部分だが、グリーンの電飾の光の中からブロンドのキム・ノヴァクが現れる夢のようなシーンや、ジャネット・リーが恋人との逢い引きから金を持ち逃げしてシャワー室で殺されるまでを、ヒッチコックがじつに嬉しそうに語っているのだ。この場面のやりとりを聞いていると、録音テープには記録されていても、書籍版では割愛されたコメントがいくつかあるのがわかる。「金髪のキム・ノヴァクがバスルームから出て来るのを待つ間、ジェームズ・スチュアート扮する主人公は興奮して勃起しているのだ」とヒッチコックが語るくだりは、そのあけすけな性的表現に驚かされた。しかしこの部分は、書籍版では見事にカットされている。

(原題:Hitchcock/Truffaut)

伏見ミリオン座(ミリオン2)にて
配給:ロングライド
2015年|1時間19分|フランス、アメリカ|カラー、モノクロ|1.78:1
公式HP: http://hitchcocktruffaut-movie.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3748512/

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