アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

2016年12月23日(金)よりTOHOシネマズ シャンテにて先行公開
1月14日(土)より全国公開

テロと戦うことでテロに屈服するという逆説

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

 イギリス軍諜報部のキャサリン・パウエル大佐は、多くの犠牲を払いながら長年追い続けていたテログループ幹部の居場所を突き止めた。場所はケニアのナイロビだ。現地の軍特殊部隊と協力して捕獲作戦を決行しようとした矢先、テロリストたちはグループの支配地域にある別の隠れ家に移動してしまう。敵の支配地域で特殊部隊を動かすことは出来ない。だがこのチャンスを逃せば、次にいつ彼等を見つけられるかわからないのだ。パウエル大佐と国防省のベンソン中将は、無人機を使ったミサイル攻撃を主張する。だがロンドンの会議室に集まった政府の閣僚たちは、この計画に難色を示す。捕獲作戦がミサイル攻撃による暗殺に変更された場合、法的な妥当性や政治的なリスクが未検証だったからだ。政治家たちは攻撃に怖じ気づき、決断を迫る中将の前で責任を押し付け合う。その頃アメリカのネバダ州にある米軍基地では、無人機の新人パイロットが攻撃命令を待っていた。

 ハイテク化された現代の戦争を描く、異色の戦争映画だ。登場するのは弾丸が飛び交い硝煙の臭いがする戦場ではなく、ほとんどが会議室と作戦司令部だ。攻撃のためにミサイルの発射ボタンを押すパイロットですら、実際の現場から遠く離れた基地の中から一歩も外に出ない。攻撃する側は相手の攻撃を受けることのない絶対安全圏にいて、現地から送られてくる映像や情報をもとに、遠隔操作された無人機で相手を攻撃する。だがこれほど「安全な戦争」であっても、戦闘に踏み切る人たちには逡巡や葛藤があり、戦闘が生み出した犠牲を前にして心を深く傷つける。なまじ日常と戦争が隣接しているだけに、心の傷は深く生々しいものになるのだ。だがこれが「対テロ戦争」というものなのかもしれない。テロリストは爆弾テロや自爆テロで、人々の日常生活の場を戦場に変えてしまう。それに対抗する側も、日常と戦場が隣接する新しいタイプの戦争でテロに対処しているのだ。

 でもこれは結局のところ、テロリストの勝利なのかもしれない。テロリストはテロの恐怖によって、平和な市民生活を損なうことを目的としている。テロとの戦いが人々の生活に修復不可能な傷を付けるなら、それはテロリストにとって勝利だ。例えばこの映画には、テロリストを攻撃するために無関係な市民を傷つけて構わないのかという問題が出てくる。巻き添えを被る側にとって、それはテロリストの攻撃とどこが違うのだろうか。これは無人機からのミサイル攻撃に限らない。例えば日本ではテロリストに対抗するためと称して、新たに共謀罪という法律を作って市民生活を監視しようとしている。共謀罪は市民生活を大きく損ねることになるだろう。テロの脅威によって、平和な市民生活を大きく損なわれるなら、それはテロに屈したのと同じではないか。日本ではイスラム過激派によるテロは起きていない。だが日本は対テロ対策という形で、既にテロに巻き込まれている。

(原題:Eye in the Sky)

伏見ミリオン座(ミリオン1)にて
配給:ファントム・フィルム
2015年|1時間42分|イギリス、南アフリカ|カラー|シネスコサイズ
公式HP: http://eyesky.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt2057392/

Eye in the Sky
Eye in the Sky

posted with amazlet at 17.01.16
Original Soundtrack
Imports (2016-03-25)
売り上げランキング: 95,279

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