天使にショパンの歌声を

1月14日(土)公開 角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

学校を守ろうとする修道女の奮闘

天使にショパンの歌声を

 1960年代。カナダのケベックに、カトリックの女子修道会が営む寄宿制の音楽学校があった。校長はもとコンサート・ピアニストのオーギュスティーヌ。彼女の教育方針に従って、学校には音楽を愛する多くの修道女と生徒が集まっている。だがこの時代、教会は社会の世俗化という荒波に大きく揺り動かされていた。政府は公教育を充実させ、カトリック系の学校からも多くの生徒が公立学校に転校している。教会は第2バチカン公会議後の改革で、ミサの方式や修道会のあり方が大きく変化している。オーギュスティーヌの学校は、修道会の経費削減を理由に閉校の瀬戸際にある。オーギュスティーヌは学校の存続をはかるため、マスコミを集めたイベントを開催し、広く社会に向けて学校の必要性をアピールした。同じ頃、学校にはオーギュスティーヌの姪アリスが転入してくる。彼女はピアニストとして天性の素質を持ちながら、自分の殻に閉じこもりがちな問題児だった。

 原題は『オーギュスティーヌの情熱』、あるいは『オーギュスティーヌの受難』とでも直訳できるだろうか。日本語のタイトルはまったく意味不明で、いったいこの映画に登場する誰が「天使」で、なにが「ショパンの歌声」なのかさっぱりわからない。一応ショパンの「別れの曲」に歌詞を付けた歌が歌われるシーンもあるのだが、それが映画のテーマと関わる重要な場面になっているわけでもない。映画は学校存続のため奮闘するマザー・オーギュスティーヌの行動を追いかけ、そこに教会や社会の変化に翻弄される修道女たちの姿や、オーギュスティーヌと姪アリスの関わりなどがサイドエピソードとしてからんでくる。しかし物語の中核にあるのは、やはりオーギュスティーヌの音楽教育と学校存続への熱意ということになるだろう。アリスのエピソードはもう少し膨らましてもよかったと思うが、ここは意外なほどあっさりした描写。それだけに、日本語タイトルがなぁ……。

 映画の中で具体的にいつの出来事なのかという描写はないのだが、物語は1960年代の後半が舞台だろう。第2バチカン公会議(1962〜1965)後の改革によって、カトリック教会が急速に変化していった時期だ。教会ではミサがラテン語から世俗語(映画の中ではフランス語)で行われるようになり、カトリックの伝統的な聖歌もポップス調の新しい歌に置き換えられていく。こうした変化の先に、修道服の改革があり、学校の閉鎖という話も出てくるのだ。時代に合わせて変化していくことは、その中にいる人たちに少なからず動揺や衝撃を与える。戸惑いや不安を懐かせるだけでなく、場合によってはその心を深く傷つけることにもなる。映画を観ていると、世俗化する社会の中で1960年代のカトリック改革が不可避だったことと、改革による変化がいかに急激なものだったかがわかるのだ。教会改革をひとりの修道女の視点から見た、なかなか興味深い作品だった。

(原題:La passion d’Augustine)

伏見ミリオン座(ミリオン2)にて
配給:KADOKAWA
2015年|1時間43分|カナダ|カラー
公式HP: http://tenshi-chopin.jp/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4392438/

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