恋妻家宮本

1月28日(土)公開 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー

明日は我が身の熟年夫婦コメディ

恋妻家宮本

 中学教師の宮本陽平と妻の美代子は結婚して27年。一人息子の正が結婚して福島に引っ越したことから、夫婦ともに50歳にして初の二人暮らしがはじまった。だがそんな矢先、陽平は部屋の中でただならぬものを見つけてしまう。それは美代子の署名が書かれた離婚届だ。日付はまだ新しい。一体なぜ、こんなものがあるのだ? 青天の霹靂とはまさにこのことで、狼狽しまくる陽平。だがこの事実を妻に突きつければ、彼女の気性からしてその場で「ハイ離婚です」ということに成りかねない。一体どうすればいい。優柔不断な陽平は悩む。同じ頃、陽平が担任を務めるクラスでも家庭訪問がスタート。お調子者でクラスでも人気の“ドン”こと克也の自宅を訪問するのが、陽平にはちょっと気が重い。ドンの母は夫が海外に単身赴任中、不倫相手と交通事故を起こして入院しているのだ。私生活に大きな不安要素を抱えたまま、陽平はドンの家族についても気をもむことになる。

 重松清の小説「ファミレス」を、人気ドラマ「女王の教室」(2005)や「家政婦のミタ」(2011)の脚本家・湯川和彦が脚色し監督も務めたコメディ映画。主演は阿部寛と天海祐希。物語の最初と最後がファミレス(デニーズ)になっているのだが、これは日本人の誰もが共有できる「生活の中の原風景」という以外には、これといって大きな役目を果たしていないと思う。主人公たちはまさに僕と同い年なのだが、吉田拓郎の「今日までそして明日から」(1971)に何らかの青春の郷愁を感じるような年齢ではないだろうに……と、同世代ならではの違和感を感じたりもする。これはむしろ『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001)のエンディングに流れる曲として印象に残っている。50歳の人間にとってこれは、自分が子供の頃に流行っていた「往年のフォークソング」であって、自分にとってリアルタイムの曲ではないだろう。

 ひょっとすると湯川監督は『オトナ帝国』が何らかの形で触発されて、この映画にこの楽曲を使うことにしたのかもしれない。仮にでもそう考えることで、この映画にはまた別の様子が見えてくると思う。これは「クレヨンしんちゃん」に登場する子育て夫婦の20年後の姿なのだ。「クレしん」の野原一家は強い結束で様々な危機を乗り越えていくのだが、それは「子供がいてこその家族」という姿になっていないだろうか。小さくて手が掛かる子供も、いずれは成長して家を出ていく。その時、野原一家は夫婦ふたりでどう過ごすのだろう。これはそんなシミュレーションでもある。映画は宮本家の子育て時代を一切描かない。だからこそ、この空白部分にはどんな夫婦の子育て経験でも代入できてしまうのだ。それは「クレしん」の野原一家でもいいし、映画を観ている自分自身でもいい。子供を育てている家庭にとって、宮本家の姿は明日の自分たちの姿を予告するものなのだ。

109シネマズ名古屋(シアター1)にて
配給:東宝
2016年|1時間57分|日本|カラー|ビスタサイズ
公式HP: http://www.koisaika.jp
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt5240878/

ファミレス (上) (角川文庫)
重松 清
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