未来を花束にして

1月27日(金)公開 TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

100年前のイギリスで女性の参政権を求めて戦った人たち

未来を花束にして

 20世紀初頭のイギリス。子供の頃から洗濯工場で働くモーラは、配達の途中で過激な婦人参政権活動家たちのデモに巻き込まれる。当時のイギリスでは女性たちに参政権がなく、社会的な権利もほとんど保障されていない。権利を求める女性たちの声は、政治家たちに無視され、社会からも無視され、マスコミも完全に沈黙していた。活動家たちが時に暴力的な示威行動を起こすのは、自分たちの主張を「社会的な事件」として認知させるための作戦だ。モーラにとってこうした活動は他人ごとだったが、働いている工場で活動家の女性と知り合いったことで変化しはじめる。下院の公聴会で、工場労働の実態を証言することになったのだ。彼女の言葉に、議員たちも深い同情を示す。だが、結果は何も変わらなかった。変わったのは、モーラも活動化の一員として警察にマークされるようになったことだ。モーラは逮捕され、夫とは離婚。子供は奪われ、工場もクビになってしまう。

 原題の『Suffragette』は、20世紀初頭にイギリスやアメリカに現れた婦人参政権活動家のこと。一般的な婦人参政権運動家(選挙権拡大論者)を「Suffragist」と呼ぶのに対し、非合法な手段さえ辞さない過激な活動家たちのことを意味する。映画の中でも描かれているが、当時はそうでもしないと「参政権を求めている女性たちがいる」「女性の権利が不当に抑圧されている」という事実を、社会に訴えることができなかったのだ。政治家は女性を無視し、マスコミもこの問題にはダンマリを決め込んだ。活動家たちは「反社会的な扇動家」としてネガティブに報じられ、警察は社会に無用な混乱を引き起こす犯罪者集団として活動家たちを取り締まった。一般市民の多くは、警察にマークされている活動家たちを危険人物だと考えて遠巻きに眺めていた。だが彼女たちの活動がなければ、現在のように女性に選挙権が与えられることはなかったに違いない。

 映画の中でメリル・ストリープが演じる運動の指導者エメリン・パンクハーストや、映画の終盤で壮絶な死を遂げるエミリー・ディヴィッソンは実在の人物。映画の中にはハンストや強制摂食、投石や放火、爆弾闘争など、当時の活動を巡る歴史的な事実がふんだんに盛り込まれている。映画が扱っているのは、活動が大きく盛り上がり取り締まり当局との対立も激しくなった1912年から13年までの時期。しかし1914年に第一次大戦が始まると、活動家たちは戦争協力に転じて対立路線を放棄することになった。映画が1913年で物語を切り上げたのは、ここがいい頃合いだったからに違いない。映画の主人公モーラは架空の人物だろうが、この運動を指導者や筋金入りの幹部たちの視点からではなく、日々の生活に追われる最底辺の庶民の視点から描くことには意味があったと思う。運動の掲げる高尚な理念より、まずは運動の持つ「熱気」が人々を動かしていったのだ。

(原題:Suffragette)

伏見ミリオン座(ミリオン3)にて
配給:ロングライド
2015年|1時間46分|イギリス|カラー|シネマスコープ|5.1ch
公式HP: http://mirai-hanataba.com
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt3077214/

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