ラビング 愛という名前のふたり

3月3日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

人種差別法と戦ったラビング夫妻の物語

 1958年、バージニア州。恋人ミルドレッドの妊娠したと知った時、リチャードは迷うことなく結婚を申し込んだ。ふたりはワシントンD.C.で結婚の手続きを済ませ、バージニアのミルドレッドの家で一緒に暮らし始めた。だがそれから間もなく、ふたりは逮捕されてしまう。罪状は異人種間結婚禁止法違反だった。ふたりは執行猶予が付くことを条件に罪を認めるが、それは夫婦が生まれ故郷のバージニアを去らねばならないことを意味している。執行猶予期間は何と25年。その間に州内で夫婦が一緒にいれば、再逮捕されて刑務所に送られてしまうのだ。新居はワシントンD.C.。夫婦の間には3人の子供が生まれるが、夫婦揃って故郷に帰ることはできない。田舎育ちの夫婦にとって、D.C.での暮らしはあまりにも窮屈だ。アメリカは公民権運動の時代を迎えている。ミルドレッドは友人の薦めで、司法長官のロバート・F・ケネディに窮状を訴える手紙を書いた。

 アメリカで異人種間結婚禁止法を撤廃させるきっかけを作った、リチャードとミルドレッド・ラビング夫妻の伝記映画だ。映画は1958年から67年までの出来事を描いているが、これは僕にとっては大昔の出来事というわけではない。何しろ僕が生まれたのが1966年だから、僕が生まれたその時には、海の向こうでラビング夫妻が州政府や連邦政府を相手に訴訟の真っ最中だったわけだ。アメリカの凄さはこうした状態を「間違っている」と認めるが早いか、さっさと制度を改めてしまうところにある。ラビング夫妻の訴訟をきっかけに異人種間の結婚が合法化されると、同じ年のうちに異人種間結婚をモチーフにした映画『招かれざる客』(1967)が作られている。21世紀に入ると、この判決は同性婚承認のための先行判決として用いられるようになった。「家族と故郷で暮らしたい」という一組のカップルのささやかな願いが、アメリカ社会を大きく変化させたのだ。

 主演はジョエル・エドガートンとルース・ネッガ。この名前を聞いても、ほとんどの人はピンと来ないだろう。エドガートンは『エクソダス:神と王』(2014)でラムセス2世を演じた俳優。ネッガはこの映画が大きな役で出演する初めての映画だと思うが、見事アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされることになった。誰もが知っている有名俳優が出演しないことで、この映画には等身大のリアリティが生まれている。映画はアメリカの歴史にとって画期的な裁判を描きながら、それを大きな社会的視点から描くことを避け、ひたすら主人公夫婦の個人的な視点で描いていくのだ。この裁判を担当する若い弁護士にはそれなりに野心があるのだが、主人公夫婦には「社会のために」とか「他の困っている人々のために」という気持ちがあまりない。それだけに「家族を守る」とか「妻を愛している」という素直な気持ちが、観ている側の胸にすっと落ちて感動させられるのだ。

(原題:Loving)

伏見ミリオン座(ミリオン2)にて
配給:ギャガ
2016年|2時間3分|イギリス、アメリカ|カラー|2.35:1
公式HP: http://gaga.ne.jp/loving/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt4669986/

Loving - Original Motion Picture Soundtrack
David Wingo
Backlot Music (2016-11-18)
売り上げランキング: 424,267

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