アシュラ

3月4日(土)公開 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

暴力描写はヘビー級だが、ドラマ部分は重量不足かも

 韓国のアンナム市は、インフラ開発から取り残されて薄汚れた地方都市だ。汚れているのは町の中身も同じ。政治家も腐りきっている。その親玉が、長年市政を牛耳る市長のソンベだった。刑事のドギョンはそんな市長に飼われ、汚れ仕事を一手に引き受けることで甘い汁のおこぼれに預かっている。だがそれを察知した同僚の刑事が「自分にもオイシイ仕事を回せ」と半ば脅迫してきたことから、取り返しの付かないトラブルが起きる。ドギョンが誤って、その同僚を転落死させてしまったのだ。彼は自分を「アニキ」と慕う後輩刑事ソンモと示し合わせ、近くにいたヤク中の男を犯人に仕立て上げる。だが市長の告発に執念を燃やす特別検察のキム検事は、事件の真相を知りながら、ドギョンに市長を潰すためのスパイになれど持ちかける。断ることはできない。だが市長を裏切れば、自分の命はないだろう。ドギョンは市長と検察の板挟み。どこにも逃げ隠れする場所はなかった。

続きを読む

ボヤージュ・オブ・タイム

3月10日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

テレンス・マリックが描く「いのちの営み」の世界

 「世の中は 何にたとえん 水鳥の嘴(はし)振る露に 宿る月影」と、曹洞宗の開祖である道元禅師は歌に詠んだ。世界の姿は、水鳥のくちばしから滴り落ちた水滴に映る月のようなものだ。それはきらめきながら水に落ち、あっという間に姿を消してしまう。だが月そのものは、その前も、その後も、夜空に輝き続けている。宇宙の誕生以来、星々は生まれては消え、地球の上では生命が生まれては消えて行く。ひとつひとつの命は儚く脆い。だがその背後には、宇宙誕生から一貫している命の営みの法則がある。命は現れては消える。これからも、命は現れ、そして消えて行くだろう。そのすべての命は、宇宙の中でひとつにつながっている。遠い昔に現れて消えた命が、いま生まれる命に力を与える。そしていま消えて行く命が、未来の命につながれていく。世界は命に満ちている。この映画は宇宙に満ちるすべての「いのちの営み」を、ダイナミックな映像で紡ぎ出していく。

続きを読む