ちはやふる ー結びー

3月17日(土)公開 TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー

人気のかるた映画は王道の青春映画だった

 千早・太一・新の3人は高校3年生になった。千早と太一の瑞沢高校かるた部は、2年生の部員ゼロ。このままでは廃部かと思われたが、太一目当ての1年生・菫と、かるた経験者でいきなり凄腕の秋博という新入部員を迎えることができた。一方で福井の高校にひとり進学した新は、団体戦で千早たちと戦うため競技かるた部を創設。多くの経験者を擁するかるた部は難なく地方大会を制し、瑞沢かるた部と戦うため全国大会に出場する。しかし瑞沢かるた部からは受験に専念するため太一が離脱し、残されたメンバーには動揺が広がる。だが、かるたから離れたはずの太一は予備校で講師のアルバイトをする名人・周防に出会う。周防の異次元の強さを目の当たりにして、太一は再びかるたの世界に引き寄せられていく。全国大会決勝戦トーナメント。順当に勝ち上がってきた千早たち瑞沢高校と、新が率いる福井代表の藤岡東高校は決勝戦で雌雄を決することとなったのだが……。

 2016年公開の『ちはやふる ー上の句ー』『同 ー下の句ー』を観ないまま、いきなり完結編だけ観るという暴挙に出たのだが、これはなかなか楽しい、良い作品だった。この映画はまず第一に、競技かるたをモチーフにした異色の「スポ根ドラマ」としての面白さがある。「友情・努力・勝利」という、少年ジャンプ的な王道のストーリー展開だ。勝利を目指して努力する中で、主人公たちは人間的にも少しずつ成長して行く。恋愛要素もあるが、それが物語の中央にしゃしゃり出てこないのも良い。登場人物同士の関係性にあやを付ける伏線として、恋愛的な要素が多少からんでくるのだ。多彩な登場人物はみな魅力的だが、物語が駆け足になって掘り下げが不充分になっているのは残念。例えば新入部員の秋博がなぜ最初から強いのかについて、説明らしい説明はない。そうした脇筋の説明を思い切ってすべて割愛し、キャラクター造形だけに徹する大胆な脚色は潔いと思う。

 この映画は子供から大人への第一歩を踏み出す高校生たちの悩みや葛藤を、じつに丁寧に描いてみせる。それは例えば、主人公たちの高校生活最後の全国大会であり、高校卒業後の進路選択だ。楽しい高校生活は永遠には続かない。時が来れば、主人公たちも大人になってしまう。そんな子供と大人のはざかい期を描くことこそ、青春映画のテーマではないか。少年少女の時間は、ほんの一瞬だからこそ美しい。映画はその「一瞬の時」の輝きを、百人一首の歌に込められた「千年の時」の輝きと対比してみせる。千年を隔てた時を結びつける接着剤になっているのが、百人一首の中の恋の歌。かるたを通じて現代高校生たちの「一瞬の時」は千年へと拡張され、千年前の歌は時空を越えて今目の前にある「一瞬の時」の中に凝縮される。一瞬と千年が交差する魔法のような時間を、映画はアニメーションの技法を使って表現するのだが、この場面で僕は涙が出そうになってしまったよ。

109シネマズ名古屋(シアター5)にて
配給:東宝
2018年|2時間8分|日本|カラー
公式HP: http://chihayafuru-movie.com/
IMDb: http://www.imdb.com/title/tt6821870/

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