グレイテスト・ショーマン

2月16日(金)公開 全国ロードショー

伝説的な興行師の伝記ミュージカル映画

 19世紀半ばのアメリカ。貧しい仕立職人の息子に生まれたP・T・バーナムは、上流階級出身の幼なじみチャリティーと結婚したものの、いつまでも貧しい暮らしから抜け出せないままだった。思いあまった彼は詐欺まがいの手法で銀行から1万ドルを借り、蝋人形や剥製を展示する博物館をオープンさせる。しかしこれもまったく客受けしない。だが娘の言葉にヒントを受けて、彼は博物館で新しいショーを始める。それは小人や巨人、ヒゲ女に毛むくじゃらの男、百貫デブ、黒人兄妹の空中ブランコなど、センセーショナルな話題を振りまく見世物興行だった。ショーは大当たりするが、同時に社会の良識派からの非難も激しくなる。バーナムは自分のショーを上流階級に認めさせるため、一座を引きつれてイギリスのビクトリア女王に謁見。さらにヨーロッパでナンバーワンのオペラ歌手、ジェニー・リンドのアメリカツアーを企画する。しかしこれが大きな落とし穴となった。

 アメリカを代表するサーカス団「リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス」に名前を残す興行師、フィニアス・テイラー・バーナム(1810〜1891)の前半生をもとにした伝記ミュージカル映画。無一文から世界最大級のサーカス会社を作り上げたバーナムは、アメリカのショービジネス界では伝説的な人物。しかしそのサーカス団は、この映画が作られた2017年に経営不振で解散している。ゾウやライオンが出演するサーカスという興行が、もはや現代社会では観客に受け入れられなくなっていたのだ。そんな事情もあってか、この映画では動物の存在はあまり目立たない。それより大きくクローズアップされているのは、バーナムの初期興行で人気を呼んだ異形の出演者たちだ。物語の中では、ヒゲ女や小人、巨人などと並んで、黒人の芸人が当時の興行の目玉に成り得たことが描かれている。ただしその描写はごく控え目なものが。

 この黒人芸人のエピソードに限らず、映画としては全体に生ぬるい状態で終わっていると思う。登場する人たちは誰も彼もが中途半端に善人で、主人公のキャラクターも陰影に乏しい。倒産した会社の沈没した船を抵当に金を借りるのは正真正銘の詐欺だと思うが、この映画ではそのあたりの悪事を中途半端にしか描かない。社会的成功のために昔からの仲間を裏切り、見捨ててしまう冷たさも、回りくどくほのめかされるだけだ。人間の持つ明るさや健全さは、同じ人間の持つ暗い側面やふとした瞬間に垣間見える不健全さによって、映画のスクリーン上にシャープな像を結ぶのだ。この映画は主人公を最初から最後まで「夢見がちな善人」として描くことで、主人公のキャラクターの幅を狭めてしまったと思うし、この破天荒な主人公に振り回される周囲の人々の苦しみや悲しみや心の痛みに、切実さが感じられないものになったと思う。時折いい場面もあるが、映画としては弱い。

(原題:The Greatest Showman)

109シネマズ名古屋(シアター10)にて
配給:20世紀フォックス映画
2017年|1時間45分|アメリカ|カラー|2.39:1
公式HP: http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt1485796/

グレイテスト・ショーマン(オリジナル・サウンドトラック)
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