万引き家族

6月8日(金)公開予定 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

是枝裕和監督のカンヌ映画祭パルムドール受賞作

 路地の隙間から、東京スカイツリーが見える東京下町。高層マンションと昔ながらの小さな平屋が混在するこの地域に、柴田家の人々は肩寄せ合うようにして暮らしている。年金暮らしの祖母を中心に、小さな家に夫婦と息子、叔母が同居する暮らし。だがこの一家には、あまり大っぴらには言えない秘密の稼業がある。彼らは生活費の不足を、万引きで補っているのだ。ある冬の夜、近くのスーパーでその日の「仕事」を済ませた帰り道のこと。父の治と息子の祥太は、近くのアパートの廊下で一人震えている幼い女の子を見つける。「コロッケ食べるかい?」と声をかけた治は、結局その子を自分たちの家に連れて帰ってしまう。「ゆり」と名乗ったその少女には、体中に虐待のあとがあった。翌日女の子を元のアパートに連れ帰ろうとした夫婦は、部屋から聞こえてくる「子供なんて欲しくなかった」という怒鳴り声を聞いて、どうしてもゆりを帰すことができなくなってしまう。

 是枝裕和監督がカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した話題作だが、実在の事件に触発されて作られた映画という点で、2013年の『そして父になる』や2004年の『誰も知らない』、あるいは『DISTANCE』(2001)に連なる作品だと思う。これらの作品にも共通しているのは、ニュースなどで話題になっている事件の裏側にひっそりと息づいている当事者たちに寄り添い、彼らのささやかな日常にある喜怒哀楽を丁寧に描写していくことだ。例えばこの映画に登場する家族たちは、誰もが「社会の落伍者」に違いない。強者の理論ばかりがまかり通る今日の日本社会では、彼らは「自己責任」や「自業自得」で切り捨てられてしまう人たちなのだ。だがそうした「社会の多数派」になれない人たちに寄り添うのが、文学や映画のひとつの役割。過去に名作名画と呼ばれる映画の多くは、社会からはみ出た人たち、社会の常識の中では生きられない人たちを描いてきた。

 この映画は、一般社会が疑うことのない「普通」の残酷さや醜悪さを描いている。映画の中盤に登場する緒形直人の偽善者ぶりには苦笑いするが、映画終盤に出てくる池脇千鶴には本当にウンザリさせられる。お前は何をどれだけ知っていて、良識ぶった偉そうな顔で安藤サクラに説教しているのかと思う。だがこの池脇千鶴は、日本社会にいる我々多数派の姿そのものではないのか。彼女には、自分がきわめて恵まれた境遇にいるという自覚がない。その中で育まれた自分の常識を疑うことなく、その常識の尺度の中で生きることができない人にも平然と押し付ける。我々は自分の持つ「普通」の概念を疑わないまま、自分の思い描く「普通」の外側にいる人たちを見捨て、時に見殺しにするのだ。柴田家の人たちはそんな残酷な世界の中で、何とか「普通」であるかのように装い、偽って生きている。擬態だ。しかしその擬態の、なんと巧みなことか。そして、なんと温かいことか。

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン5)にて
(パルムドール受賞記念 2日間限定先行ロードショー)
配給:GAGA
2018年|2時間|日本|カラー
公式HP: http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8075192/

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