七人の侍《4Kデジタルリマスター版》

6月8日(金)公開 午前十時の映画祭

フォルマリズムの果てのリアリズム

 戦国時代末期。野武士の略奪に苦しめられた山間の小さな村は、侍を雇って野武士と戦うことを決意する。だが侍に払う金はない。報酬はただ、白い飯を腹一杯食わせるだけだ。農民の窮状を聞いて、7人の浪人が村に馳せ参じることになった。浪人のリーダーである勘兵衛は、農民たちを指揮して村の防備を固め、あちこち柵や堀を巡らして要塞化する。やがて麦の刈り取りが終わり、いよいよ野武士たちがやって来た。侍と農民たちは勘兵衛の巧みな戦略で野武士を次々に撃退するが、その間に侍にも少なからず犠牲が生じる。侍と農民たちは疲れ果て、野武士も追い詰められている。このまま長い戦いは難しい。短期決戦しかない。おそらくそれは、明日の朝に迫っている。そして夜明け。決死の覚悟で村に襲いかかってくる野武士たち相手に、侍や農民たちも最後の力を振り絞って戦い抜く。やがて野武士は全滅。しかし7人いた侍たちのうち、生き残ったのは3人だけだった。

 黒澤明が生涯に撮った30本の映画の中で、1本だけ代表作を選べと言われれば、やはりこの映画に尽きるという大作時代劇。この映画は以前から古いフィルムで何度か観ているが、正直どこがなぜ傑作なのかがよくわからない点もあった。物語は面白いし、人物造形も素晴らしい。しかしやたらと長く、録音が悪くて台詞がよく聞き取れない。『七人の侍』は映画ファンがお勉強のために観ておく作品であって、映画としての魅力は『隠し砦の三悪人』(1958)や『椿三十郎』の方がずっと優れているというのが僕の個人的な感想だった。だが本作は最近になって、4Kデジタルリマスターの新しい上映素材が完成したことで、それまでの印象が一変した。映像からはノイズが消え、艶やかなモノクロームの映像が蘇った。台詞もすべてが明瞭とは言わないまでも、7〜8割がしっかり聞こえるようになった。これに比べれば、『万引き家族』(2018)の方が台詞は不鮮明だ。

 この映画を観ると、黒澤明が表現主義の影響を強く受けた映画作家であることがよくわかる。黒澤明はリアリズムの作家ではなく、むしろフォルマリズムの作家であるというのが僕の評価だ。これは、晩年の『影武者』(1980)や『乱』(1985)のようなカラー作品でより明確になる。僕はうした表現について、晩年の黒澤監督が若い頃に愛した映画の記憶を引用した、ある種のノスタルジーみたいなものだと考えていたこともある。だが違うのだ。黒澤明は若い頃から一貫して表現主義の監督であり、映画でしか表現し得ないフォトジェニーを最優先する作家だった。例えば勝四郎と志乃が出会う場面に登場する一面の花は、きわめて人為的な舞台設定でありながら、映画としてその作為を超越し、それが映画としての異様なリアリズムを生み出すことになる。徹底した作り事が、作り事としてのリアリティを獲得する。これは、アニメーション映画と同じことかもしれない。

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン7)にて
配給:東宝
1954年|3時間27分|日本|カラー|スタンダード
公式HP: http://asa10.eiga.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0047478/

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