用心棒 《4Kデジタルリマスター版》

6月22日(金)公開 午前十時の映画祭9

見事な脚本、豪華な配役、すごい演出!

 着のみ着のまま、行くあてもない浪人がひとり、北関東の宿場に流れ着く。絹の取引で栄えた町だが、今は対立するやくざ同士の抗争で血なまぐさく凄惨な場所になっている。宿も店も雨戸を閉め切り、大手を振ってのさばっているのは、近隣からかき集められた無法者たちばかり。まともな人間なら怖じ気を震って逃げ出しそうなものだが、腕に覚えのある浪人は「気に入ったぜ」とニヤニヤ笑って宿場に腰をすえてしまう。「三十郎」と名乗る浪人は、やくざ同士を上手く煽って衝突させ、弱ったところで根絶やしにしてしまう腹だ。しかしいよいよやくざたちが大げんかを始めようとした矢先、八州廻りの役人が来てけんかはしばし沙汰止み。だがこの休戦期間を利用して、やくざたちは着々と次の抗争への準備を進めている。浪人もうまく自分を売り込んで、抗争後に備える。しかしこのケンカは、突然休戦から手打ちになった。冷酷で知られる卯之助が、町に戻ってきたのだ。

 黒澤明と三船敏郎のコンビによる娯楽時代劇で、クリント・イーストウッドを世界中に売り出したマカロニ・ウェスタン『荒野の用心棒』(1964)や、ギャング映画『ラストマン・スタンディング』(1996)にもリメイクされた作品。この映画のヒットで黒澤映画には珍しく続編『椿三十郎』(1962)も作られ、凄腕の浪人三十郎は、俳優三船敏郎の当たり役になる。この2本以外にも、三船は『座頭市と用心棒』(1970)で同じような用心棒を演じ、テレビ時代劇「荒野の素浪人」シリーズ(1972〜74)でも峠九十郎というキャラクターを演じた。三十郎とそこから派生したキャラクターがなければ、剣豪スターとしての三船敏郎のキャリアはだいぶ寂しいものになっていたかもしれない。またこの作品の登場で、当時の日本映画界は「三十郎ショック」と呼ばれる衝撃に襲われたとされる。様式化された殺陣に代わり、リアルな殺陣が好まれるようになった。

 いろいろな意味で「映画史の中の教科書」のような作品になっている『用心棒』は、当時の観客や映画人たちに与えたショッキングなイメージとは裏腹に、じつに丁寧に作られている作品でもある。特にオープニングの主人公登場シーンから、街道沿いの農家で宿場の様子を老夫婦に語らせ、宿場に入ってからは、めし屋の主人が主人公に宿場の抗争の様子をテキパキと説明するくだりが素晴らしく手際がいい。キャスティングも黒澤組の常連がずらりと顔を揃え、凝りに凝ったメイクや衣装でチンドン屋すれすれの賑やかさ。主要な役から脇役のチンピラやくざまで、じつに楽しそうに演じているのがわかる。番太を演じた沢村いき雄は黒澤組の常連だが、これが一番大きな役ではないだろうか。亥之吉を演じた加東大介は、これが最後の黒澤映画出演。それとバトンタッチするように、仲代達矢がここから黒澤組レギュラーになる。塀を乗り越えて逃げる藤田進の笑顔も忘れがたい。

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン7)にて
配給:東宝
1961年|1時間50分|日本|カラー|シネマスコープ
公式HP: http://asa10.eiga.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0055630/

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