雨に唄えば

7月20日(金)公開 午前十時の映画祭9

映画愛にあふれる傑作ミュージカル映画

 1927年のハリウッド。映画スターのドン・ロックウッドは、相手役リナ・ラモントとのコンビで何本ものヒット作を世に放ち、今また新作『闘う騎士』の製作に突入していた。世間はドンとリナの交際の行方にやきもきしているが、これはスタジオ宣伝部の作った広告用のエピソード。ドンが目下夢中になっているのは、数ヶ月前のパーティで出会ったキャシーというダンサーだった。キャシーは撮影所のエキストラとして働いているところでドンと再会し、ふたりは交際をスタートさせる。しかしハリウッドにはトーキー映画の革命が押し寄せていた。『闘う騎士』も急遽トーキーで製作されることになった。技術的な問題を乗り越えて、何とか映画は完成。しかしリナの舌足らずな台詞回しとキーキー声で、試写会場は爆笑の渦に包まれる。これが公開されたら身の破滅。しかしそこで、ドンやキャシーは画期的なアイデアを思いつく。リナの台詞をキャシーが吹き替えるのだ!

 劇場で、ビデオで、DVDで、何度も観ているMGMの傑作ミュージカル。古典映画は何度観ても新しい発見がある。今回観ていてつくづく感じたのは、これはジーン・ケリーの映画であると同時に、ドナルド・オコナーの映画だということだった。ふたりがコンビで歌ったり踊ったりする場面がいくつかあるが、オコナーは背が高く、手足が長く、表情が豊かで、軽やかなステップにはスピード感もある。ケリーも当然一流だが、ダンスの切れはオコナーの方が優っている。俳優としてのドナルド・オコナーは、これ以外にマリリン・モンローと共演した『ショウほど素敵な商売はない』(1954)があるが、代表作はやはり『雨に唄えば』で決まりだ。演じている役は、物語の中にいなければいないで何とかなりそうな脇役。しかし『雨に唄えば』という名作は、オコナーなしにはあり得ない。ドナルド・オコナーなしに作品が成立しても、これほどの傑作にはならなかったと思う。

 「映画を作る映画」の代表的な1本であり、全編に作り手たちの「映画に対する愛」と「製作スタッフや出演者たちに対するリスペクト」を感じる作品だ。この映画が作られたのは1952年で、映画の舞台になっているのはトーキー元年の1927年。トーキー登場でドタバタ騒ぎになった撮影所の様子を、25年後に映画化しているわけだ。25年前のことだと、当時の様子を良く知るスタッフや俳優たちがまだスタジオには大勢いた。この映画の製作者たちはそうしたスタジオの古顔たちに丁寧に取材して、当時の苦労話を一級品のコメディに仕立てたのだ。僕がこの映画で涙してしまうのは、まさにそういう部分なのだ。この映画の製作現場には、25年前のトーキー出現を現場スタッフとして体験した人もいただろう。そうした人たちは映画の中で再現されている自分たちの青春時代を、どんな気持ちで眺めていたことだろう。それを想像すると、これほど泣ける映画はない。

(原題:Singin’ in the Rain)

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン7)にて
運営:「午前十時の映画祭」実行委員会
1952年|1時間43分|アメリカ|カラー|スタンダード
公式HP: http://asa10.eiga.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0045152/

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