カメラを止めるな!

6月23日(土)公開 新宿K’s cinema、池袋シネマ・ロサ

この映画のヒットが事件である!

 元浄水場だという古びた廃墟で、低予算ホラー映画の撮影が行われている。突然現れたゾンビに襲われるというありきたりの内容だが、監督は主演女優の演技が気に食わずに何度もダメ出し。ひたすらリアルな本物の恐怖を求める監督は、激しい演技指導で俳優たちを追い込んで行った。それこそがもはや狂気。あまりの熱気に、出演者もスタッフも正直ドン引きだ。だがその撮影隊に、本物のゾンビが襲いかかる。じつはこの廃墟には、ある噂があった。旧日本軍がこの施設を使って、死体を蘇らせる人体実験を行っていたというのだ。映画の撮影スタッフは次々にゾンビに感染するが、その中で狂喜乱舞しながらカメラを回し続ける監督の姿があった。「これこそが本物だ。これが本物の恐怖なんだよ!」。監督はこの廃墟に関する噂を知って、あえて撮影場所に選び、死者を蘇らせる血の儀式でゾンビを招き寄せたのだ。だがこれは、この物語のほんの始まりに過ぎなかった……。

 今年の日本映画界で、おそらく最大の話題作。東京都内のたった2館でスタートした上映はみるみるうちに日本中に広がり、各地のミニシアターからシネコンに拡大している。僕が今回観たのもシネコンだが、客席が九分通り埋まる大盛況ぶり。映画のヒットを大げさに宣伝しているのだろうと半ば眉唾で劇場に足を運んだので、ほぼ満席と言っていい状態に驚かされてしまった。しかも観客の多くは、映画に満足しているようだ。もっとも映画のデキは、正直それほどでもないと思う。もともとは監督・俳優養成スクールであるENBUゼミナールの《シネマプロジェクト》で製作された自主映画で、これまでに同スクールで作られた映画でも、今回のように商業的にヒットした作品はないはずだ。今回の映画も、商業ヒットを期待していたわけではないだろう。映画は見るからに低予算で、それは出演者が全員無名だという点からも伝わってくる。それが商業的に大ヒットしたのだ。

 映画は二段構えになっていて、前半は超低予算のゾンビホラー映画。後半はそこから1ヶ月さかのぼって、映画が完成するまでの製作裏話が描かれる。映画好きなら誰もが好きにならずにいられない、「映画を作る映画」だ。『雨に唄えば』から『映画に愛をこめて アメリカの夜』『リビング・イン・オブリビオン/悪夢の撮影日誌』『地獄でなぜ悪い』に至るまで、このジャンルに大ハズレはまずない。映画作りの現場で起きるさまざまなトラブルを乗り越えて、スタッフたちが悪戦苦闘しながらひとつのものを作り上げていく過程は、滑稽であり、なおかつ感動的だ。この映画は映画作りの過程を見せてから完成品を出すのではなく、完成品をまず見せておいてからその舞台裏をさらすという構成がユニーク。そこで前半のホラー映画パートで見られた不具合やダメな場面が、なぜそうなってしまったのかが明かされていく。前半パートのダメダメさが、後半で帳消しになる魔法。

109シネマズ名古屋(シアター6)にて
配給:ENBUゼミナール、アスミック・エース
2017年|1時間36分|日本|カラー|ビスタサイズ
公式HP: http://kametome.net/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt7914416/

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