若おかみは小学生!

9月21日(金)公開 新宿バルト9ほか全国ロードショー

子供にとっての「死」を取り上げた意欲的な作品

 「おっこ」こと関織子は、小学6年生の元気な女の子。交通事故で両親を亡くし、母の実家である伊豆の温泉旅館に引き取られた。祖母の峰子が切り盛りする、春の屋という小さな温泉宿だ。そこでおっこを出迎えたのは、クモ、トカゲ、ヤモリ、極めつきは自分と同じ年頃の幽霊・ウリ坊だった。どうやら事故のショックで、おっこには霊感のようなものが身に付いたらしい。「峰子ちゃんを助けたって!」と言うウリ坊の後押しもあり、旅館の仕事を手伝うようになるおっこ。こうして花の湯温泉郷に、小学生の若おかみが誕生した。だが旅館にやって来るのは、くせのある客ばかり。おっこは精一杯のもてなしで、訪問客たちの心を癒やしていく。美少女の幽霊・美陽や、土鈴の魔物・鈴鬼など奇妙な仲間も加わり、学校での友人も増えていく。だがいつも明るく元気なおっこも、心の奥底に隠している大きな傷があった。ある宿泊客の訪問で、それが明らかにされるのだが……。

 令丈ヒロ子の同名児童向け小説シリーズ(イラストは亜沙美)を、『茄子 アンダルシアの夏』(2003)の高坂希太郎監督が映画化した長編アニメ作品。同時期にテレビアニメ版も作られているのだが、映画はその総集編や別バージョンというわけではない。原作とキャストの大部分が重なっているが、他は別スタッフによる独立した作品になっているようだ。映画は小学6年生の少女おっこがたどる、ほぼ1年間の物語になっている。やや駆け足ではあるが、山あいの温泉街の春夏秋冬の移ろいを、巧みに映像化しているのは見事なものだ。こうした丁寧な描写があればこそ、重たいテーマをしっかりと受け止め消化することができるのだろう。この映画のテーマは「死」だ。最初におっこの両親の死があり、彼女がこの衝撃をいかに受け止め乗り越えて行くかが、映画全体のテーマになっている。ウリ坊や美陽も子供時代に死んで幽霊になり、最初の客あかねの母も死んでいる。

 現代人にとって、人の死は縁遠いものになっている。小さな子供にとっては、尚更だろう。だがあらゆる子供が、死を知らぬままにいるわけではない。例えばこの映画の主人公おっこは、事故で両親を亡くしている。世の中には彼女と同じように、事故や病気で親しい人を突然亡くす子供が大勢いるのだ。子供はいつまでも暗い顔をしてメソメソ泣いているわけではないのだが、親しい人の死が生み出した心の傷は、その後もしばしば疼いて子供を苦しめることになる。映画にはおっこが車に乗っているとき、突然PTSDの発作を起こす場面が出てくる。若おかみ修行や幽霊魔物とのドタバタを経て、この映画のテーマが突然明らかにされる瞬間だ。このシーンは映画を観ている観客にとってもショッキングで、そのショックは映画終盤にも再びおっこと観客に襲いかかる。このエピソードの処理が少々きれい事に見えるのは気にならないでもないが、映画にとっては小さな傷だろう。

ミッドランドスクエアシネマ2(スクリーン14)にて
配給:ギャガ
2018年|1時間34分|日本|カラー
公式HP: https://www.waka-okami.jp/movie/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8328740/

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