バッド・ジーニアス 危険な天才たち

9月22日(土)公開 新宿武蔵野館ほか全国順次公開

天才高校生が編み出した禁断のビジネス

 中学時代に成績優秀で数学コンテストのチャンピオンにもなったリンは、富裕層が通う名門校に特待生として招かれる。学校ではじめてできた友人はグレース。あまり成績がよくない彼女のために、リンは試験の最中にこっそり答えを教えてあげた。だがこのことが、グレースの交際相手パットに伝わってしまう。「僕にも試験の答えを教えてほしい。他の仲間たちにもだ。報酬は払う」。授業料免除の特待生も、学校に通い続けるには他にも何かと金がかかる。貧しい父子家庭のリンにとって、高額の報酬は何よりも魅力だった。リンは試験中に暗号を使って「顧客」たちに答えを教えることを思いつく。だがこの不正の一端に気づいたのは、同じく貧しい特待生のバンクだった。特待生の資格を剥奪されたリンは、父親に厳しく諌められて二度と不正に手を染めないことを誓う。だが卒業間近になった時、グレースとパットから、彼女に途方もない大口の取引が持ちかけられた……。

 高校生の「カンニング・ビジネス」をモチーフにした学園青春ドラマで、学内のスクールカーストから、社会が抱える教育格差、生徒間の貧富の格差、家族の情愛など、さまざまなテーマが重層的に織り込まれた脚本になっている。主人公のリンをはじめ、親友のグレース、その恋人パット、貧しい優等生バンクなど、主要なキャラクターがそれぞれ個性的に、かつ好人物として丁寧に描かれているのも素晴らしい。彼らは試験で不正を行っていても、悪人というわけではない。リンは「困っている友達を助けたい」という気持ちから最初の不正に手を染め、自分の学校のことで親に経済的な負担をかけている現実と、貧しい生徒の家庭からも何かと金を取り立てる学校への反抗心が不正に手を染めるに動機になる。グレースは恋する少女の愚かさで不正をパットに漏らし、パットは「楽して成果だけ得たい」という正直さと、おそらく半分はイタズラ心で、カンニング商売に精を出す。

 国民の多くが敬虔な仏教徒であることで知られるタイだが、映画の舞台になっているのはカトリック系の私立学校。学校内で貧しい特待生が差別されたりいじめられたりする場面は特にないのだが、生徒たちの鼻持ちならない特権意識は物語の背後にしっかり隠されていて、映画の終盤でそれがむきだしになる。彼らに悪気はないのだ。物心ついた頃から甘やかされて育ち、それが当たり前だと思っているのだから仕方がない。高校生とは言え、彼らはまだ幼い子供なのだ。その幼さや、幼いがゆえの愚かさもまた、映画ではしっかりと描かれている。この映画の本当のテーマは、「幼い子供が大人に成長する」という普遍的な成長物語でもあるのだ。初登場シーンで父親と一緒に登場したリンが、最後は父親から離れるラストシーンが、それを象徴しているかもしれない。悪気がなければそれで許される、無邪気な子供時代は終わってしまう。子供時代の終わりは、ちょっとほろ苦い。

(原題:ฉลาดเกมส์โกง)

センチュリーシネマ(センチュリー2)にて
配給:マクザム、ザジフィルムズ
2017年|2時間10分|タイ|カラー|シネマスコープ
公式HP:https://maxam.jp/badgenius/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6788942/

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