十二人の死にたい子どもたち

1月25日(金)公開 TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー

自殺サイト版の「十二人の怒れる男」

 閉鎖して廃墟になりかけた病院に集まって来た、12人の若者たち。彼らはネットで知り合い、全員で集団自殺するためこの場に集まったのだ。心変わりして立ち去りたいなら、それは本人の自由。ただし集団自殺に反対する者がいるなら、その時は全員一致するまで話し合わねばならない。ぞれがルールだ。しかしこの時、当初予定していなかったことが起きる。死ぬために12人が集まったはずが、集合場所には既にひとつの死体があったのだ。この死体は何者なのか? 彼は自殺なのか、それとも誰かに殺されたのか? 彼が誰かに殺されたのだとすれば、これは集団自殺ではなく殺人事件になってしまう。このまま自殺を決行すべきか否か、最初の採決が行われる。全員が自殺に賛成すると思われる中で、反対はわずかに1名。しかしルールが求めるのは話し合いだ。ここから13人目の死の謎を探る、長い物語がスタートする。謎を解く鍵は、病院のあちこちに残されていた。

 冲方丁の同名ミステリー小説を、堤幸彦監督が映画化。タイトルからもわかるように、物語の構造は過去に何度もリメイクや翻案されている傑作TVドラマ「十二人の怒れる男」(1954)を下敷きにしている。(1957年にヘンリー・フォンダ主演で製作された映画はこのリメイクだ。)密室にそれまで互いに見ず知らずだった12人の人間が集められ、全員一致で「ある決定」を行おうとする。ところがそれに反対する者がひとり現れたことから、12人は問題解決のための長い議論に入る。やがて賛否は逆転。最後は12人全員の採決で、最初の多数意見とはまったく異なる結論に達するが、12人はその結果に満足し、晴れ晴れとした顔で密室から外に出ていく。「十二人の怒れる男」は何度もリメイクされ、筒井康隆の「十二人の浮かれる男」や三谷幸喜の「12人の優しい日本人」のような翻案作品も作られた。本作も、そんな翻案作品の一種と言うべきかもしれない。

 12人のはずが13人目の人間がまぎれ込んでいるというアイデアは、萩尾望都の「11人いる!」を連想させる。しかし物語はそこにあまりこだわらず、かなり早い段階で「13人目は誰か?」や「なぜ、どんな目的で13人目がまぎれ込んだのか?」という話を放り出してしまう。これがミステリーとしては少々物足りない。そもそも論を言うなら、僕には12人が揃って自殺する必然性がわからない。メンバーの中には「集団自殺」という形式にメッセージ性を見出してこだわる者もいるのだが、それ以外の人たちは勝手に自分ひとりで死んでもいい人たちだろう。12人それぞれの「死にたい理由」はわかっても、「他人と一緒に死にたい理由」がわからないため、ヒステリックに「早く死ななきゃ!」と騒ぎ立てる一部のメンバーにイライラさせられてしまった。そんなに死にたいなら、集団安楽死を辞退してその辺のビルから飛び降りればいいはずだ。まるで納得できない。

109シネマズ名古屋(シアター3)にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
2019年|1時間58分|日本|カラー
公式HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/shinitai12/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9315000/

十二人の死にたい子どもたち (文春文庫)
冲方 丁
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