翔んで埼玉

2月22日(金)公開 全国ロードショー

これは映画ならではのウルトラC

 恋人との結婚が決まり、やっと熊谷の実家を出て憧れの東京暮らしができると張り切る愛海。両家顔合わせのため両親の車で会場に向かう途中、ラジオから流れてきたのは「埼玉にまつわる都市伝説」を紹介する番組だった。1990年代。東京の超エリート校である白鵬堂学院に、アメリカからの転校生・麻実麗がやって来る。都会育ちの超リッチなエリートを感じさせる麗の優雅な物腰に、在校生たちは夢中。都知事の息子で生徒会長の壇ノ浦百美は当初反発したものの、やがて彼に惹かれていくことになる。これは単なる好意ではないく、禁断の恋。だが麗は身分を偽って学園に侵入した埼玉県民だった。当時東京は埼玉や千葉との県境を閉ざし、両県から東京に入るには通行手形が必要だった。中でも埼玉県への差別は激しく、県民はほとんど人間扱いされていないありさま。身分を偽って東京に侵入した「かくれ埼玉人」への取り締まりも苛烈だった。麗と百美は埼玉に逃れる。

 魔夜峰央の同名コミック作品を、『テルマエ・ロマエ』(2012)や『今夜、ロマンス劇場で』(2018)の武内英樹監督が映画化したコメディ映画。荒唐無稽なファンタジーである原作をどう料理するのかと思ったら、原作部分を「車の中で聴くラジオ番組」という劇中劇に仕立ててある。この劇中劇パートは、アメリカ帰りの高校生・麻実麗をGACKT(45)が演じ、彼の恋人となる生徒会長の壇ノ浦百美(男性です)を二階堂ふみ(24)が演じるというキャスティング。これが見事にはまってしまう程度に、このパートは無茶苦茶だ。東京、埼玉、さらに千葉、神奈川、あるいは群馬や茨城などの県民性を、好き勝手にイジクリ倒すのは原作以上。映画はさらにラジオを聴く一家の現代パートを入れて、それを21世紀版にアップデートしている。徹底的に現実感のないアホな話なのだが、映画の最後には、多くの観客が「いや、ひょっとすると」と思わせられるだろう。

 ストーリーは徹頭徹尾「埼玉ディス」しまくりだ。しかしこれが嫌らしく見えないのは、そのディスりっぷりが強烈すぎて突き抜けた爽やかささえ感じることと、映画の作り手に「埼玉ディス」以上の徹底した「埼玉愛」を感じるからだと思う。脚本は獨協大学(埼玉県草加市)出身の徳永友一。現代パートに出演しているブラザートムは埼玉育ち。島崎遥香、成田凌も、ちゃんと埼玉出身だ。なお千葉出身の妻を演じた麻生久美子は本当に千葉出身で、このパートについては出演キャストと出身地が揃えてある。原作は1980年代に書かれたもので、たまたま数年前に再発見的なブームが起きたものの、わざわざ映画にまでする意味があるのかといぶかしんでいた。しかし映画は見事にそうした観る側の予断を跳ね返し、21世紀の今も続く「東京一極集中」を批判し、「地方の時代」を讃える、紛れもない今この時の映画になっている。当たり前だが、東京だけが日本ではないのだ。

109シネマズ名古屋(シアター2)にて
配給:東映
2019年|1時間47分|日本|カラー
公式HP: http://www.tondesaitama.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8860946/

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