記者たち 衝撃と畏怖の真実

3月29日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開

食べ足りない。おかわりをくれ!

 2001年9月11日。ニューヨークの世界貿易センタービルに2機のジェット旅客機が突入し、国防総省(ペンタゴン)にも旅客機が突入した。のべ3千人近い死者を出した、アメリカ同時多発テロだ。新聞社ナイト・リッダーのワシントンD.C.支局では、この事件に関する政府の対応を取材しはじめる。アメリカ政府はただちに実行犯をイスラム系テロ組織アルカイダだと断定し、本拠地があるアフガニスタンへの対テロ作戦を開始した。しかしこれと並行して、アメリカ国内ではこの事件に対する「イラク黒幕説」が流れはじめたのだ。ナイト・リッダーの取材では、そんな事実は完全に否定されている。中東関係の専門家も、軍関係者も、捜査関係者や情報筋も、同時多発テロとイラクの結びつきはないと断言している。だがイラク黒幕説は日に日に大きくなり、マスコミも、世論も、政治家も、政府も、イラクへの軍事侵攻へと傾く。ナイト・リッダー社は孤立していた。

 大量破壊兵器の存在という偽情報に踊らされ、大きな犠牲を払って中東情勢を不安定化させたイラク戦争。イスラム国の台頭も、シリア内戦の泥沼化も、イラク戦争さえなければ生まれなかった。本作はアメリカやそれに追随する世界が「イラクによる大規模テロ」という偽情報に飲み込まれていく中で、自分たちが信じる真実を発信し続けた小さな新聞社の記者たちを主人公にした実録ドラマだ。映画の中でウディ・ハレルソンが演じたジョナサン・ランデイ、ジェームズ・マースデンが演じたウォーレン・ストローベル、トミー・リー・ジョーンズが演じるジョー・ギャロウェイなどは実在する記者たちだ。劇中で「伝説の記者」と呼ばれているギャロウェイは、2002年に製作されたベトナム戦争映画『ワンス・アンド・フォーエバー』の原作者のひとりで、映画にもそのことが描かれる。映画のキャンペーンで来日した際、僕は雑誌記事のために彼のインタビューをしている。

 しかし僕はこの映画に不満だ。手練れのロブ・ライナー監督が登場人物たちのエピソードを巧みに交通整理し、物語をコンパクトにまとめている。何しろこれだけの話で、映画の上映時間はたった1時間半しかないのだ。この小さな器の中に、イラクに従軍して負傷した若い兵士の物語があり、ナイト・リッダーの記者たちの話があり、その家族や恋人の物語があり、伝説の記者の活躍があり、織りなされるエピソードの隙間から、少しずつ歴史的事件の真相が見えてくる。しかしこの映画、エピソードが盛り沢山すぎるのだ。映画の中でも言及されていた『大統領の陰謀』(1976)は、エピソードをほぼ新聞記者たちだけに絞り込み、それでいて上映時間はこの映画より50分も長い。『大統領の陰謀』が大盛りカツカレーだとすれば、本作は手際よくきれいに盛り付けられた小洒落たカフェのワンプレートランチみたいなもの。見た目は華やかだが、満腹になるには量が少ない。

(原題:Shock and Awe)

伏見ミリオン座(ミリオン3)にて
配給:ツイン
2017年|1時間31分|アメリカ|カラー|ビスタ|5.1ch
公式HP: http://reporters-movie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt5540992/

SHOCK & AWE
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