麻雀放浪記2020

4月5日(金)公開 丸の内TOEIほか全国ロードショー

これは「ふんどし放浪記」である

 西暦2020年の日本。浅草の路上に突然現れた青年は、手の中に麻雀牌の五筒(ウーピン)を握りしめていた。彼の名は哲。1945年(昭和20年)の焼け野原になった東京で、麻雀博打に明け暮れていた若きギャンブラーだ。それがなぜか75年後の東京にいる。2020年の東京は直前に起きた戦争の影響でオリンピックが中止になり、社会格差が広がり人々の心は荒廃していた。そんな世界で無一文の哲を拾ったのは、メイド雀荘で働く売れない地下アイドルのドテ子。彼女はタレント事務所の社長兼マネージャーのクソ丸と暮らす安アパートに哲を招き、ここから3人の同居生活がはじまる。クソ丸は麻雀番組にドテ子を出演させて細々と事務所を維持していたが、哲に麻雀の才覚があることに気づくと、褌一丁の奇抜な扮装のイケメン雀士「昭和哲」としてテレビ局に売り込む。最初は物笑いの種になっていた昭和哲も、麻雀の腕が超一流とあって人気は急上昇していく。

 違法薬物使用で逮捕されたピエール瀧の出演作で、一時は公開が危ぶまれた作品。ただし主演は斎藤工で、ピエール瀧は数シーンに出てくるだけだ。とりあえず作品が公開されたのは結構なことだと思う。物語は阿佐田哲也の「麻雀放浪記」や、和田誠が1984年に監督した同名映画をベースにしてはいるのだが、原作のリメイクではないし、パロディでもない。「坊や哲」という主人公のキャラクターは共通し、戦後焼け跡の雀荘風景には、出目徳、ドサ健、女衒の達、オックスクラブのママ(八代ゆき)といった、原作や和田版映画の登場人物たちも出て来る。哲が2020年の世界で出会うドテ子やクソ丸も、原作「風雲編」の登場人物だ。そういう意味では、これは原作の大胆な翻案と言えなくもないのだが、物語の舞台は近未来(2020年だから来年だ)であり、AIを使った人間型ロボットが一般に市販されているSF的な別世界。主人公が最後に戦うのもAIなのだ。

 映画化段階で原作をぶっ壊すのは、別に悪いことではない。スピルバーグの『JAWS / ジョーズ』だって、野村芳太郎の『砂の器』だって、原作をだいぶいじっている。大事なのは映画が原作をいじって、原作以上に面白くすることだ。原作の熱心なファンに許しがたい改変も、面白くさえなっていれば映画ファンは許す。では今回の『麻雀放浪記2020』は、原作以上に面白くなっているか? 残念ながら、今回の映画は原作にも映画の前作にも遠く及んでいないと思う。全体としても及んでいないし、部分的にもダメだ。斎藤工のふんどし姿はインパクトがあるが、残念ながらこの映画はふんどしの映画ではない。とはいえ今でもカルト的な人気を誇る原作を、あえて「ふんどし映画」にしてしまった作り手の蛮勇には恐れ入る。映画とはかくも自由だ。プロデューサーや映画会社さえOKなら、何をやっても許される! 観客がそれを許すかは、また別問題なのだが……。

ミッドランドスクエアシネマ2(シアター12)にて
配給:東映
2019年|1時間58分|日本|カラー
公式HP: http://www.mahjongg2020.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9551928/

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