ROMA/ローマ

3月9日(土)公開 全国順次公開

映画史のエポックとなる話題作

 1970年のメキシコシティ。医者の家で住み込み家政婦をしているクレオの仕事は、家事や4人の子供たちの世話をすることだ。雇い主であるアントニオ医師は研究者として世界中を飛び回り、家を留守にすることも多い。妻ソフィアとの間では口論が増えてきた。だがそんな妻を残して、アントニオは再び海外出張へ。そしてそのまま、帰ってこなくなってしまった。出張という話はでまかせで、秘かに作った愛人とリゾート地へのバカンスに出かけてしまったのだ。一方クレオは恋人フェルミンの子供を妊娠するが、妊娠を告げた途端に恋人は彼女の前から姿を消して待った。妊娠したことがわかれば、勤め先をクビになるかもしれない。意を決してソフィアに事実を告げると、彼女は親身になって家族同然に扱ってくれる。ソフィアはこの家で赤ん坊を生むことになった。同居しているソフィアの母や子供たちも、日に日にお腹が大きくなる彼女をごく自然に受け入れるが……。

 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004)や『ゼロ・グラビティ』(2013)のアルフォンソ・キュアロン監督が、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品だ。ゴールデングローブ賞では外国語映画賞と監督賞を受賞し、アカデミー賞でも外国語映画賞・監督賞・撮影賞を受賞した。製作はネット配信事業者のNetflix。ここ数年、ネット配信業者は独自のプログラムや作品作りに力を入れているが、本作もそうしたオリジナル作品のひとつ。もともとはテレビ映画だ。過去にもテレビ映画が映画祭に出品されたり賞を受賞する例はあった。例えばイングマール・ベルイマンのテレビ映画は再編集して映画として公開され、いくつかの賞を受賞している。映画とテレビの境界線は、ずいぶん前から曖昧なのだ。本作『ROMA/ローマ』の例は、テレビと映画の境界線がもはや完全に消滅してしまったことの象徴的事例として記憶されるような気がする。

 キュアロン監督は、日本で最初に公開された『リトル・プリンセス』(1995)から僕のお気に入りの監督だ。カメラワークや美術セットに作為的な技巧を凝らした空間表現に、大きな特徴を持つ映像作家だと思う。今回の映画もそうしたキュアロン流の技法が生きている。画面をモノクロにすることで、キュアロン作品のもうひとつの特徴である色彩の豊かさは封印されているのだが、映画後半のクライマックスとなるデモ隊の虐殺や、終盤の海辺の場面などは、カラーにするとこれだけの迫力が出なかったのではないだろうか。キュアロン監督は『トゥモロー・ワールド』(2006)のクライマックスでも、激しい戦闘シーンをモノトーンの映像で描いている。そもそもキュアロン流の映像は、画面の中の色を整理して、特定のトーン(モノトーン)に集約するものなのかもしれない。完全モノクロになった本作は、その行き着く先のひとつ。でも次回はカラー作品が観たいな。

(原題:Roma)

伏見ミリオン座(劇場4)にて
配給:Netflix
2018年|2時間15分|メキシコ、アメリカ|カラー|2.39 : 1
公式HP: https://www.netflix.com/jp/title/80240715
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6155172/

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