芳華 Youth

4月12日(金)公開 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

1970年代が舞台の中国版『四十二番街』

 1970年代の中国。人民解放軍で兵士たちの慰問などを行う芸能部門「文工団」の地方部隊に、17歳の少女・小萍(シャオピン)が入隊する。ダンスの才能を見込まれて異例の時期の入隊だったが、地方出身で野暮ったい彼女は団員たちの笑いもの。他の寮生の軍服を無断で借りて写真館で写真を取ったことがばれると、「泥棒」「嘘つき」と同僚たちのいじめのターゲットになってしまう。そんな彼女に分け隔てなく親身になってくれるのは、文工団の模範生・劉峰(リウ・フォン)だけだった。だが彼は団の歌姫・丁丁(ディンディン)に密かに思いを寄せている。ある日とうとう自分の思いを彼女に打ち明けた劉峰は、その現場を他の団員に目撃され、丁丁の不正確な証言もあって実戦部隊に転属させられてしまった。ひっそりと文工団を去る劉峰を見送ったのは、小萍だけだった。間もなく小萍も退団。しかし1979年に勃発した中越戦争が、二人の運命を狂わせていく。

 映画のストーリーは、1933年のミュージカル映画『四十二番街』(1980年に舞台化)に似ている。『四十二番街』は以下のようなストーリーだ。田舎出身の小柄で垢抜けないダンサーが、ブロードウェイの新しいショーに雇われる。先輩ダンサーたちの揶揄や嘲笑の中で、彼女に優しく接してくれるのは、一座の中でも一目置かれる花形の男性歌手だけだった。だがショーがいよいよ幕を開けるという日を前にして、主演スターが大ケガ。このままでは舞台の幕が上がらない。監督はヒロインを代役に大抜擢する。尻込みする彼女を仲間たちも後押しし、彼女は一夜にして大スターになる。そんな古典的サクセスストーリーを、『芳華 Youth』がどの程度意識したのかはわからない。だが『四十二番街』は有名なバックステージものだし、たまたま似てしまったとは考えにくい。この映画は『四十二番街』の筋立てを知っていると、皮肉や悲劇性がさらに強調されるのだ。

 『四十二番街』は大不況時代に作られた作品で、華やかなステージの外には苛酷な現実が存在することが前提になっている。だが『四十二番街』では巧妙に隠されていた「世の中の現実」を、『芳華 Youth』は観客に見せてしまう。文革時代の粛清で、ヒロインの父が追放されたまま死んでしまうのもそのひとつだ。実力主義のはずの文工団でも、家族が党幹部であれば優遇される現実がある。そして苛酷な現実の最たるものが、映画終盤にある中越戦争の場面。華やかな歌や踊りの世界の外側に追いやられた若者たちは、戦場で血と硝煙にまみれてのたうち回る。物語は主人公たちの退団後は「それから○年後」のように駆け足になり、最後の30分は蛇足と考える人もいるかもしれない。劉峰と小萍の退団で終われば、これは文革期の中国を舞台にした『四十二番街』の別バージョンになっただろう。でもこの長い長い後日談があったおかげでハッピーエンドが見られたのだ。

(原題:芳华 Youth)

センチュリーシネマ(劇場2)にて
配給:アットエンタテインメント
2017年|2時間15分|中国|カラー|2.35 : 1
公式HP: http://www.houka-youth.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6654316/

42ND STREET (1933)
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