パドマーワト 女神の誕生

6月7日(金)公開 全国順次ロードショー

豪華絢爛なインドの王朝叙事詩

 13世紀末の西インド。若き王ラタン・シンに見初められ、パドマーワティは故郷シンガール王国からメーワール王国へと嫁いだ。だが同じ頃、北インドで勢力を伸ばしていたハルジー族のアラーウッディーンは、スルタンに即位していた叔父を暗殺して自らがスルタンの座を奪い取ると、強大な軍事力で周辺国を次々支配下に置いていく。世界中の宝物を手に入れた彼が次に願ったのが、絶世の美女パドマーワティを手に入れることだった。アラーウッディーンはメーワールに進軍し、大軍勢で城壁を取り囲む。だがメーワールの堅固な守りは、おいそれとは敵を近づけない。籠城戦を戦う大軍の維持にはコストがかかる。兵士たちの食料も尽きかけた頃、アラーウッディーンはメーワールに使者を立てて和睦を申し入れる。だがこれは、豪胆だが計算高い彼の用意周到な策略だった。アラーウッディーンと会談したラタン・シン王は、ハルジー朝の都デリーに連れ去られてしまう。

 パドマーワティはインドで良く知られている伝説的ヒロインらしい。映画に悪役として登場するアラーウッディーン・ハルジーは実在の人物で、彼に攻撃を受けるメーワール王国も実在した国。国王のラタン・シンがアラーウッディーンの軍勢と戦って生け捕りにされたのも実際に起きたことで、パドマーワティの物語はこれらの歴史的事実をもとに創作されたものだという。映画はその伝説の世界を、現代につながる「文明の衝突」の物語として描き出す。メーワール国は、きらびやかな装飾に彩られたヒンドゥー文化。ハルジー朝はトルコ系イスラムで、薄暗く、泥臭く、ホコリっぽく、血なまぐさい世界だ。メーワールは信義を重んじ、ハルジーは裏切りも謀略も何でもありの勝利至上主義。しかし優雅で華麗なメーワールは、覇権主義の前に敗れ去る。歴史の中で、美しきものが滅びていく悲劇。日本で言えば、奥州藤原氏の滅亡みたいな話か。判官びいきは世界共通なのだ。

 目を見張るような場面も多数あるのだが、この映画に僕は乗れなかった。物語を牽引するのはアラーウッディーンと、メーワールのラタン・シン王。ヒロインのパドマーワティ王妃は、ドラマの脇役に過ぎない。彼女が主体性を持って行動するのは、映画冒頭の狩りの場面と、ラタン・シン王救出のエピソード、そして物語から退場していく最後のエピソードだけなのだ。しかしそのどの場面でも、彼女が主体的に物語を引っ張っていく部分はない。彼女は王国興亡のドラマに巻き込まれる悲劇の王妃だが、2時間44分の歴史スペクタクル映画の中で、1秒たりとも歴史の主人公になっていない。映画はこうした弱さを、王宮内での嫁姑の確執ドラマなどで埋め合わせようとしているのかもしれないが、「文明の衝突」や「王国の存亡」という大きな物語に比べると、これはあまりにもみみっちい。映画の作り手はパドマーワティより、アラーウッディーンが好きだったんだろうな。

(原題:Padmaavat)

センチュリーシネマ(センチュリー1)にて
配給:SPACEBOX
宣伝:シネブリッジ
2018年|2時間44分|インド|カラー|シネマスコープ
公式HP: http://padmaavat.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt5935704/

Padmaavat
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