アナと世界の終わり

5月31日(金)公開 新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

歌って、踊って、ゾンビがガブリ!

 クリスマスを数日後に控えているというのに、高校生アナの生活はまるで冴えなかった。卒業後は町を出ようとせっせとアルバイトで金を貯めているが、娘の大学進学を望む父はそれを知ってヘソを曲げる。学校はつまらないし、バイト先はかび臭いボーリング場。親しい友人もいまいちの連中ばかり。だがある朝目を覚ますと、世界の様子は一変していた。町の人々が、次々ゾンビになっていたのだ。バイト仲間のジョンと何とかバイト先のボーリング場に逃げ込んだが、そこには夜中に町でビデオ撮影をしていたステフとクリスも難を逃れて立てこもっていた。しかしこの建物も、必ずしも安全ではない。4人は建物に侵入したゾンビを何とか撃退すると、生き残った人たちが軍隊の救助を待っているという学校に向けて移動しはじめる。だがその行く手には、さらに大量のゾンビたちがひしめき合っていた。はたしてアナたちは、無事に家族と再会することができるのだろうか。

 ゾンビと学園ミュージカル映画の組み合わせ。こうしたアイデアは足して2で割っることで、どちらの魅力も薄まって中途半端なものになりがち。しかしこの映画はゾンビ映画としても一定の水準をクリアし、ミュージカル映画としても高水準なものになっている。特に楽曲はどれもクオリティが高い。曲の多くは劇中のシチュエーションから独立した歌詞なので、この映画から何曲かはある種のスタンダードとして残っていくのではないだろうか。映画冒頭の「Christmas Means Nothing Without You」はクリスマスシーズンの新しい定番曲になりそうだし、学食で歌われる「Hollywood Ending」や脳天気な「Turning My Life Around」、夜のボーリング場で歌われる「Human Voice」などはいい曲だと思う。映画は今後カルトムービーになりそうだし、いずれ舞台化されるような気がする。

 匿名のゾンビたちが徘徊する中で、個性豊かな登場人物たちが織りなすドタバタ劇は観ていて楽しい。ただしこの映画の主役たちは高校生なので、身の回りの半径数メートルの範囲でしかものを考えていない。世界的な致命的感染症の蔓延という大きな物語の中で、恋愛や親子関係の問題といった思春期の悩みに頭を悩ませている。このギャップもこの映画の面白さ。ゾンビ映画の宿命で、最後に明るいハッピーエンドがないのは玉に瑕。しかし出口なき迷宮に追い込まれて逃げ場がなくなってしまうのは、むしろ現代的なエンディングかもしれない。我々もまた先の見えない迷宮の中で、今より多少はましな未来を信じて生きていくしかないからだ。もっともこのエンディングは、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(1978)の別バージョンか。結局ゾンビ映画というのは、どれだけ委曲を尽くして新しいことをしようとしても、最後はロメロの作った路線に回帰してしまのだ。

(原題:Anna and the Apocalypse)

伏見ミリオン座(ミリオン4)にて
配給:ポニーキャニオン
2017年|1時間38分|イギリス|カラー|2.39:1
公式HP: http://anaseka-movie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6433880/

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