パリ、嘘つきな恋

5月24日(金)公開 新宿ピカデリーほか全国ロードショー

中年プレイボーイの最初で最後の恋!

 ジョスランは間もなく50歳に手が届こうとしている独身貴族。有名ブランドの販売を手掛けるやり手の企業経営者だが、恋愛に関しては口から出任せの口説き文句で女性たちと次々その場限りの関係を持つプレイボーイだ。母が亡くなって実家の遺品を整理していたとき、たまたま隣家の女性ジュリーが訪れたことから、再びジョスランの虚言癖が始まる。彼女はジョスランが母の車椅子に座っていた様子を見て、彼を障害者だと思い込んでしまうのだ。ジュリーの実家に招待された彼は、そこで彼女の姉フロランスを紹介される。クラシックのヴァイオリン奏者でアマチュアのテニス選手でもある彼女は、車椅子の障害者だった。車椅子を並べて語り合ううちに、ジョスランは彼女にすっかり魅了されてしまう。彼女のテニスの試合を観戦し、海外のコンサートにも行った。これは本気の恋? しかし「障害者同士」だと思っているフロランスに、彼は本当のことを言えなかった。

 俳優のフランク・デュボスクが監督・脚本・主演を務めたラブ・コメディ。映画にはストーリーを楽しむ作品、アクションを楽しむ作品、映像を楽しむ作品などさまざまなタイプがあるが(もちろん優れた作品はその多くを兼ね備えている)、本作は俳優の芝居を楽しませる作品だ。ヒロインのフロランスを演じたアレクサンドラ・ラミーが素晴らしく、プレイボーイのジョスランが彼女に同情しているわけでも、興味本位で口説いているわけでもなく、本気で恋をしてしまうという物語に説得力が生まれている。映画を観ているうちに、観客も彼女に恋をしてしまうからだ。彼女の表情が実にいい。しかし時には、その表情をあえて見せない演出もある。プラハのホテルを立ち去るジョスランの後ろ姿を、フロランスの視点で見送る場面は、あえて主人公たちの表情のクローズアップを入れずに観客にそれを想像させる。このあたりの緩急のつけ方は、じつに上手く、心憎いものだ。

 主人公の年齢がそこそこの年配者になっているのは配役上の都合が大きいのだろうが、これが物語の重要な要素にもなっている。映画の中でジョスランの年齢は「間もなく50歳」らしいのだが、イケメンで金持ちの彼でも「年齢的にちょっと」と言われてしまうことがある残酷さ。出かける先々で女性の体を眺め回し、口説きまくり、行きずりの関係を繰り返している彼も、男性としてはそろそろ現役引退の時期が近づいている。彼がどれほど女性に愛想を振りまいてプレイボーイぶっても、彼の肉体は枯れかけてきているのだ。フロランスとの恋は、彼にとっておそらく初めての本気の恋であり、これが最後の恋になるだろう。そうであればこそ、観客はジョスランの恋を応援できる。これで彼が20代の青年や30代の男盛りだと、「それでも障害者との恋愛ってどうなのよ。セックスとかさ」と思ってしまうかもしれない。映画はそれも含め、じつに上手くできていると思う。

(原題:Tout le monde debout)

ミッドランドスクエアシネマ2(シアター14)にて
配給:松竹
2018年|1時間47分|フランス|カラー|1.85:1
公式HP: http://paris-uso.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6838702/

Tout le monde debout (Bande originale du film)
Gaumont (2018-03-12)
売り上げランキング: 145,493

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