きみと、波にのれたら

6月21日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

主題歌の使い方はまるでミュージカル

 大学進学を機に、海辺のマンションに引っ越して来たひな子。部屋の窓からは海が一望でき、波が良ければすぐ海に出てサーフィンができる。そのマンションで火事騒ぎがあったとき、助けてくれたのが消防士の青年・港だ。ふたりは付き合うようになり、ひな子の手ほどきで港もサーフィンの腕をめきめき上げていった。だがクリスマスを過ぎたその年の暮れに、港は海の事故で亡くなってしまう。突然の恋人の死に、何も手に付かなくなってしまうひな子。しかし彼女が港との思い出の歌をふと口ずさんだとき、目の前のコップの水の中に突然港の姿が現れた! それはひな子にだけ見える幻覚なのか? 港はその後も歌うたび彼女の前に現れ、ひな子はそんな彼との時間に安らぎを見出していく。たとえそれが、自分にしか見えない幽霊のような存在だとしても……。だがコップや水筒の水に親しげに、嬉しそうに話しかけるひな子の姿は、友人たちが見ても異様なものだった。

 湯浅政明監督の新作は、海辺の街を舞台にしたピュアなラブストーリー。物語の前半では主人公たちの馴れ初めから幸せいっぱいの交際期間を描くが、この幸福は突然の死で終わりを告げる。この後の物語は、ヒロインがいかにして恋人の死を受け入れ、それを乗り越えて行くかという「喪の仕事」の物語になる。映画の傾向や表現はまったく違うが、これは昨年話題になった『若おかみは小学生!』と同じ「死」というテーマを扱っているのだ。死んだ恋人が幽霊になって戻り、ヒロインを助けるという話は『ゴースト ニューヨークの幻』(1990)など前例は多い。しかし主人公が死んだ恋人との思い出の曲を歌うと、彼の姿が彼女の前にだけ現れるというアイデアはかなり風変わり。とはいえ本作ではそれがちゃんと生きていて(主題歌はGENERATIONS from EXILE TRIBEの「Brand New Story」)、音楽映画としても上出来だ。

 この映画は「音楽映画」ではあるのだが、使用されているのは「Brand New Story」1曲だけ。劇中ではこの曲が「昔流行っていた懐かしい曲」という設定なのだが、こうした設定で既成曲を使わなかったのも今回の映画のポイントかもしれない。(『ゴースト』では既成曲を使っていた。)既成曲にはそれにまつわる観客の記憶もまとわりつき、それが映画の内容と共鳴し合うこともある。しかし本作の場合はそれが映画のための新曲だから、文字通り主人公たちだけの思い出の曲に成り得る。主人公たちがもともと聴いていたであろう「オリジナルの楽曲」を劇中ではほとんど使わず、主人公たちに歌わせ続けるのも面白い演出。まるでミュージカル映画だ。こうしてこの曲にしっかり観客がいろいろな意味付けをしたあと、エンドロールで「Brand New Story」が流れてくる場面は感動的った。これはディズニーアニメと同じ仕掛けなんですよね。

ミッドランドスクエアシネマ2(シアター13)にて
配給:東宝
2019年|1時間36分|日本|カラー
公式HP: https://kimi-nami.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9193612/

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