喜劇 女は度胸

6月21日(金)公開 ミッドランドスクエアシネマ

『男はつらいよ』シリーズの双子の兄弟

 蒲田の町工場で工員として働いている学は、真面目だが不器用な青年だ。仲間たちに連れられて週末の盛り場に乗り出しても、早々に仲間とはぐれてひとりぼっち。そんな学ぶに声をかけてきたのが、大手四ツ星電器で工員をしている愛子だった。二人は不器用な交際をはじめ、一途な学はやがて彼女との結婚を意識するようになる。だがそんな彼を驚愕させる事件が起きる。学が愛子にプレゼントしたゲーテの詩集を、遊び人の兄・勉吉が持っていたのだ。「これは馴染みのコールガールに借りたのよ。美人だぜ。あっちの仕事はアルバイトで、昼間は四ツ星電器に勤めてるんだ」。なんということだ。あの愛子が、学の知らないところで娼婦の仕事をしているのだ。しかも遊び人の兄と馴染みで、もう何度もそういうことをしている。学は愛子とのデートで彼女にこのことを問いただそうとするが、それは学の疑惑をますます深めるだけだった。学は彼女と別れようとするが……。

 森崎東監督のデビュー作で、1969年製作だから、今からちょうど50年前の映画だ。原案は山田洋次で撮影は高羽哲夫、勉吉を演じるのが渥美清だから、これは同年にスタートした『男はつらいよ』シリーズと同じメンバー。森崎監督は『男はつらいよ』の1作目で脚色を担当し、3作目『男はつらいよ フーテンの寅』(1970)の監督もしている。『フーテンの寅』と『喜劇 女は度胸』は、主要キャストに重なり合う部分も多い双子の兄弟のような映画だ。それにしても、当時の出演者の顔ぶれの豪華なこと。すごいのは経歴がみな異なることだ。ここには歌舞伎もいれば、ストリップ小屋のコメディアン、新劇、軽演劇、少女歌劇団、映画会社の養成所出身など、さまざまな才能が寄り集まっている。同じ画面に出ていても、経歴の異なる俳優たちは、体から発する音色が違う。さして大編成の映画ではないが、映画がかくも重厚なアンサンブルになるのはこのためだ。

 ほぼ傑作と言っていい作品だが、物語の動力源である「主人公の誤解」に説得力があまりない。兄がゲーテの詩集を持っていたところで、突然疑惑が生じるところが唐突なのだ。これはゲーテの詩集の前に、何かしらの疑惑の種をまいておくべきだろう。例えば「詩集はどうしたの」「あれは、お友達が読みたいって言うから貸してるの」という会話が直前にあって、翌朝ゲーテの詩集が出てくればギョッとするはず。疑惑が芽生え、疑惑が膨らみ、やがてそれが確信に変化する手順をきちんと踏まないと、その後この疑惑から発するすべての出来事が空回りしてしまう。もっとも疑惑があまり真に迫っていると、物語が喜劇にならない。この取り違えによる空回りは、むしろ空回りとして描いた方がいいという判断だろうか。なお僕がこの映画で一番最初に笑ったのは、「母ちゃん。俺はこれからどうすればいいんだよ!」という息子の悲痛な叫びに、母が一言「寝ろ」という場面。

ミッドランドスクエアシネマ(シアター7)にて
配給:松竹
1969年|1時間30分|日本|カラー|サイズ|サウンド
公式HP: http://www.midland-sq-cinema.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0326999/

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