ニューヨーク 最高の訳あり物件

6月29日(土)公開 シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

物語の前提に大きな無理がないか?

 ニューヨークの高級アパートに暮らす元モデルのジェイドは、自分のファッションブランドを立ち上げた最初のショーを目前にして夫ニックに去られてしまう。夫は若いモデルに乗り替えたのだ。あまりのショックに取り乱し、仕事も手に付かなくなってしまうジェイド。そんな彼女の前に現れたのは、なんと夫の前妻マリアだった。彼女はジェイドが今住むアパートの半分の権利を、自分が持っていると言う。婚前契約だの離婚時の慰謝料だの財産分与だの、細かな法律論はわからない。しかし弁護士に相談しても、確かにアパートの権利の半分は彼女のもの。押しかけてきたマリアは勝手にジェイドと共同生活を始め、ジェイドの仕事と私生活はますます混乱していく。しかも困ったことが起きた。ジェイドが企画していたショーのための資金が、少し足りなくなってきているのだ。ジェイドはアパートを売却して資金にしたいのだが、同居人のマリアがあれこれ邪魔しはじめる。

 『ハンナ・アーレント』が日本でもヒットしたマルガレーテ・フォン・トロッタ監督が、ニューヨークを舞台に作ったコメディ映画。トロッタ監督とマリア役のカッチャ・リーマンはドイツ人。ジェイド役のイングリッド・ボルゾ・ベルダルはノルウェー人で、ニックを演じたハルク・ビルギナーはトルコ人。劇中の台詞はほとんど英語だが、マリアはドイツで暮らしているという設定で、娘や孫との会話はドイツ語になったりする。こうした家族や暮らしが成立してしまうのは、それはそれでニューヨークという街の現実かもしれない。映画はハリウッド映画ではなく、アメリカのインディーズ映画でもない独特な雰囲気。舞台は確かにアメリカのニューヨークなのだが、映画を観ていてもまったくアメリカっぽくないのは不思議。これは配役がアメリカ映画で馴染みがないと言うだけではなく、空気感が違う。屋外シーン以外はドイツのスタジオで撮っているんじゃないだろうか。

 話としては「同じ男に捨てられた元妻同士が仲良くなって男に復讐する」という展開を予想したのだが、そうならないという不思議な映画。そもそもの話をすれば、ジェイドの済んでいるアパートに突然マリアが押しかけてきて、「このアパートの半分は私の財産だから今日からここに住みます」というのがさっぱりわからない。物語の大前提となる設定自体が、そもそも無理っぽいのだ。マリアが突然ニューヨークのアパートに押しかけてきた理由も、彼女がそこに住み始めた理由も、そこを売りたがらない理由もよくわからない。彼女の行動の全てが謎すぎるし、まったく納得できない。これは文化的な背景が違うからわからないのではない。その証拠に、彼女の行動に劇中のあらゆる人が戸惑っている。マリアは主人公ジェイドの行き方や考え方に変化をもたらす、作り手に都合のいいトリックスターでしかない。個々のエピソードには面白い部分もあるが、残念な映画だった。

(原題:Forget About Nick)

伏見ミリオン座(ミリオン4)にて
配給:ギャガ
2017年|1時間50分|ドイツ|カラー|スコープ|5.1ch
公式HP: https://gaga.ne.jp/NYwakeari/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt5373854/

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