日本のいちばん長い日

6月28日(金)公開 午前十時の映画祭10 FINAL

戦争をやめられない日本人たち

 1945年7月26日。アメリカ、イギリス、中国の連名で、日本に対する降伏要求の最終宣言(ポツダム宣言)が発表された。ソ連を仲介に終戦交渉を模索していた日本は、この宣言にソ連の署名がないことから受諾を保留。だがずるずると日を経るうちに、8月6日には広島に原爆投下、9日には中立国だったはずのソ連が日本に宣戦を布告。さらに同日、長崎に2発目の原爆も投下される。軍部はそれでもなおポツダム宣言受諾に強硬に反対していたが、10日未明の御前会議で聖断がくだって宣言受諾の政府方針が確定する。しかしこの後も天皇の地位(国体)を巡って政府内で細かな調整に決着が付かず、14日に再度の御前会議でようやく宣言受諾が確定した。翌日正午から、天皇自らが国民に向けて終戦を宣告する放送が行われることも決まった。だが天皇が読み上げる終戦の詔書の文言確定と録音は14日深夜に及んだが、これはその後の事件の序章に過ぎなかった。

 日本の近代史の中で、戦前戦中から戦後への転換点となった、1945年8月15日正午の玉音放送。そこにいたる1日の出来事を、事実に沿ってドキュメンタリータッチで描いた歴史群像劇。原作は1965年に大宅壮一の名で発表された同名ノンフィクションだが、実際の著者が当時文藝春秋社の社員だった半藤一利。この原作は現在、半藤一利の著書「決定版 日本のいちばん長い日」として発売されている。映画は1967年と2015年に製作されているが、今後もこの原作映像化の決定版として残るのは、この1967年版だろう。脚本は橋本忍。監督は岡本喜八。終戦の22年後に作られたこの映画は、スタッフも出演している俳優たちも、戦争を直接体験している世代だった。岡本監督含め、軍隊経験者も多い。役を演じる俳優に役と同じ経験が必要だとは思わないのだが、この映画の醸し出す空気は、やはりこの世代の役者たちだからこそ生み出せたものだと思う。

 一度始まった戦争は、そう簡単には終わらない。それがこの映画の描いていることだ。ポツダム宣言が出された時点で、日本の敗戦はもう確定的だった。しかし戦争は終わらない。誰もが「戦争はもう終わりだ」と思いつつ、戦争を終わらせずに済む理由をぐずぐずと考え続けている。貸借対照表のように、右と左に戦争継続の理由と戦争終結の理由を書き並べ、両者を比較して「よし戦争終わり!」と出来るぐらいなら、日本はもっと早くに戦争をやめられただろう。太平洋の島々では日本軍が次々に全滅している。1945年になると、日本はフィリピンを失い、硫黄島を失い、東京はじめ日本中が空襲にさらされ、6月には沖縄も連合国の手に落ちた。だが日本は戦争をやめない。「戦争を継続する理由」のリストから項目をひとつずつ潰していき、それが残らず全部消し去られたとき、日本はやっと戦争をやめることができた。こうした日本人の習性は、今も変わっていない。

ミッドランドスクエアシネマ(シアター7)にて
配給:東宝
1967年|2時間37分|日本|カラー|シネマスコープサイズ|モノラル
公式HP: http://asa10.eiga.com/2019/cinema/917.html
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0062041/

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半藤 一利
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