ザ・ファブル

6月21日(金)公開 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

豪華で立派なキャスティングが仇になっている

 暴力団のように世間に看板を掲げることなく、裏社会のみでひっそりと仕事を成し遂げる秘密組織。その組織を知る裏社会の人間が、ファブル(寓話)と呼んで恐れる殺し屋がいる。幼い頃より徹底的に殺しの訓練を受け、どんな相手も6秒以内に殺すことができる人間凶器だ。ある大仕事を成し遂げた後、組織のボスはほとぼりを冷ますため、ファブルを関西に潜伏させることにする。その間は誰ひとりとして殺してはならない。ごく普通の一般人として、目立たぬように暮らせという命令だ。「佐藤明」という偽名を与えられた彼は、お目付役で彼の妹を演じる「洋子」と共に大阪の街で暮らし始める。社会に溶け込むためには、ケンカに弱いふりも、度胸のない泣き虫のふりもする。プロフェッショナルとして困難なミッションを次々にこなしてきた彼にとって、今は「普通になりきる」ことが課題なのだ。だがその彼が、否応なしに暴力団内部の抗争に巻き込まれて行くのだ。

 週刊ヤングマガジンで連載されている南勝久の同名コミックを、『映画 めんたいぴりり』(2019)の江口カン監督が映画化したバイオレンス・アクション映画。主演の岡田准一以下、かなり豪華なキャストだが、良かったのはファブルを匿う関西組織の幹部を演じた安田顕と、その弟分を映じた柳楽優弥ぐらい。ファブルを追う若い殺し屋の福士蒼汰、彼を雇う向井理、洋子役の木村文乃、ミサキ役の山本美月など、それなりに粒選りの顔を揃えていても、あまりそれが生きていないと思う。ボスを演じた佐藤浩市に欲しかったのは「得体の知れない大物感」だったのだろうが、残念ながら僕は彼からそれを感じることは出来なかった。今の日本には、ただそこにいるだけで熱いマグマのような熱量を感じさせる大物俳優がいなくなってしまった。これが寂しい。この日はたまたま直前に『日本のいちばん長い日』(1967)を観ていたので、それをひしひしと感じてしまう。

 ハリウッドでも活躍するアラン・フィグラルズをアクション監督に招き、流麗なアクションシーンを組み立てているのがこの映画の見どころ。しかし映画冒頭のやくざ皆殺しはともかく、クライマックスで武装する大勢のやくざ相手に素手で戦わせ、しかも相手を殺さず戦闘不能にさせるのは無理があったと思う。これは何かもう少し、勝つための工夫が必要だろう。「主人公が強いから」だけであらゆる無理を押し通してしまうのでは、流行りのアメコミ映画と変わらないではない。痛みを感じ、切れば血が出る生身の人間が、それでいて滅法強いから「都市伝説」になるわけで、それを「弾丸よりも早く、機関車よりも強く、高いビルでもひとっ飛び」にしてしまったらお話にならない。岡田准一は体も良く動いてがんばっていると思うのだが、芝居の端々でどうしても30代後半の実年齢を感じさせてしまうのは気の毒だった。あと10歳、いや、せめて5歳若ければなぁ……。

ミッドランドスクエアシネマ(シアター3)にて
配給:松竹
2019年|2時間3分|日本|カラー
公式HP: http://the-fable-movie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8676426/

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