天気の子

7月19日(金)公開 全国ロードショー

シンプルな青春メロドラマの傑作

 家出してフェリーで東京にやって来た高校1年生の森嶋帆高。しかし身分証も保証人もない彼はアルバイトもできず、フェリーで知り合った怪しげな中年男・須賀の事務所に転げ込んだ。須賀の仕事はライター。今は事務所に出入りする女子大生の夏美と一緒に、ネット上の都市伝説「100%の晴れ女」の噂を追いかけている。事務所の雑用係として東京中を駆け回るようになった帆高は、天野陽菜という少女と出会った。じつは彼女こそ噂の「晴れ女」だった。最近の異常気象で、ずっと長雨が続いている東京。しかし彼女は祈ることで、短時間に局地的な晴れ間を作ることができるのだ。陽菜は金に困ってアルバイトを探していたのだが、「晴れ女」は商売になるのではないだろうか。帆高が陽菜と一緒に「100%晴れ女」の仕事募集サイトを作ると、仕事の依頼が引きも切らなくなっていく。だがこの仕事を始めるようになってから、陽菜の体には重大な変化が起きていた。

 『君の中は。』(2016)の新海誠監督最新作。僕は『君の名は。』もいい映画だと思ったが、今回の映画はそれ以上に好きになりそうだ。物語は、一人の少年と一人の少女が偶然出会い、運命的な恋に落ちるという王道のラブストーリー。これに比べると、『君の名は。』は話を無理矢理ひねったり伸ばしたりして、観客をあらぬ方向にミスリードしていこうとする作為が鼻につく。もちろんあの映画の場合、その作為こそがアイデアの映画の中核なのだ。男女の意識が入れ替わるというアイデアも含めて、主人公たちの特殊な関係性自体に映画のアイデアや仕掛けがあった。だが『天気の子』にそれはない。少なくとも主人公たちふたりの関係には、種も仕掛けもないのだ。物語を成立させるためのアイデアや仕掛けは、すべて主人公たちの関係の外側にある。主人公たちの外側にある状況が彼らの関係を揺さぶる点で、これはSFファンタジー仕立ての通俗メロドラマなのだ。

 物語はシンプルに主人公ふたりを中心に回っていくのだが、その割には主人公たちのキャラクターがあまり深掘りされていないのもこの映画の特徴だと思う。「この人はどういう背景を持った人なのか?」という点では、帆高や陽菜よりも須賀の方が細かく設定が作り込まれている。帆高にも陽菜にも、物語の中で直接は説明されていない物語があるのだ。しかしそれは説明のないまま、映画の背景に意図的に引っ込められている。例えば、家出した帆高の顔に絆創膏が貼ってあるのは、たぶん彼の家での原因と無関係ではないだろう。でもそれがいちいち説明されることはない。陽菜の暮らしぶりも同じで、なぜそうなってしまったのかの説明はない。観客が知っている帆高や陽菜についての情報は、帆高が陽菜について知っていることや、陽菜が帆高について知っていることを大きく越えることがない。観客に「神の視点」を与えず、主人公たちの視点と足並みを揃えさせるのだ。

109シネマズ名古屋(シアター7/IMAX 2D)にて
配給:東宝
2019年|1時間54分|日本|カラー|1.78 : 1
公式HP: https://tenkinoko.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9426210/

天気の子
天気の子

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