工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男

7月19日(金)公開 シネマート新宿ほか全国順次ロードショー

実在のスパイをモデルにした実録サスペンス映画

 1990年代初頭。韓国軍の将校だったパク・ソギョンは、国家安全企画部の支持を受けて北朝鮮の内情を探るスパイになった。暗号名は「黒金星(ブラック・ヴィーナス)」。当時世界では北朝鮮の核開発疑惑が取り沙汰されており、その真相を探るために北朝鮮に直接入国して政府中枢に乗り込める人物が必要とされたのだ。軍を除隊して貿易商として北京で北朝鮮関連の商品を扱ううち、金離れのいいビジネスマンとして北朝鮮の情報組織が彼をマークしはじめる。改革開放政策で急成長を遂げていた北京には、世界中からビジネスマンとスパイが集まっている。北朝鮮当局は、パクを味方になる人物か、それとも韓国のスパイなのか品定めしているのだ。ここで正体がばれれば、パクの命はない。だが彼は何とか北朝鮮側のチェックをパスし、対外経済委員会のリ所長と太いパイプを作ることができた。リ所長の案内でパクは北朝鮮に入国し、最高指導者の金正日と対面する。

 2010年にスパイ容疑で逮捕起訴された、暗号名「ブラック・ヴィーナス」ことパク・チェソの体験談をもとにした実録スパイ映画。劇中のエピソードの多くはパク氏の実体験を再現しているようだが、主人公の名前がパク・ソギョンになっている事からも、これが「実話をもとにしたフィクション」であることがわかる。1990年代の韓国や北京、そして北朝鮮の様子が、映画の中で再現されているのが見どころ。主人公が金正日と面会する場面をこの映画のクライマックスだが、登場する金正日は姿形から歩き方まで、ニュース映像に登場する金正日にそっくり。主人公が派手な銃撃戦やカーチェイスを繰り広げ、美女をはべらす荒唐無稽なスパイ映画とは対照的に、実際のスパイは正体がばれないように地味に活動する。この映画は実録映画としてその地味さを再現しているのだが、一歩間違えれば命がないという緊張感で、映画の最初から最後までまったく気が抜けない。

 この映画で焦点になっているのは、保守政権と韓国情報部が結託して、北朝鮮による軍事挑発や政治的緊張を引き起こしているという疑惑だ。韓国では大統領選挙の時期になると決まって北朝鮮との間で緊迫状態が生じ、浮動票が保守政党に流れる現象が起きるという。映画はこれを、韓国保守政権と北朝鮮当局の馴れ合いだとしている。政権を守るため韓国の保守与党は北朝鮮当局に大金を払い、国境付近での軍事的緊張を高めたり、場合によっては小規模な戦闘状態を起こしているというのだ。韓国の保守政党は、北朝鮮が脅威であってくれた方が自分たちにとって有利。北朝鮮当局も韓国のリベラル政権が宥和政策で自国に揺さぶりをかけてくるより、敵対的な政権が固定化してくれていた方が国内の引き締めが強められる。映画に描かれていることが事実かどうかは不明だが、韓国であれ北朝鮮であれ、民族分断で利益を得ている人たちが少なくないのは事実に違いあるまい。

(原題:공작 The Spy Gone North)

センチュリーシネマ(センチュリー1)にて
配給:ツイン
2018年|2時間17分|韓国|カラー|2.35 : 1
公式HP: http://kosaku-movie.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8290698/

Spy Gone North (Korean Drama) (Original Soundtrack)
Spy Gone North (Korean Drama) / O.S.T.
Stone Music (2018-10-05)

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