さらば愛しきアウトロー

7月12日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国公開

レッドフォード流アウトローの到達点

 1980年代初頭。警察で強盗事件を担当する刑事ジョン・ハントは、たまたま訪れた銀行で強盗事件に出くわす。ところがその手口があまりにも洗練されていたことから、ハ
ントはその一部始終を目撃しながら、それが強盗事件だとはまったく気付かなかった。犯人は高齢の白人男性と数人の仲間。犯行の手口や堂々とした態度から見て、彼らは他にも事件を起こしているはずだ。近隣の警察や周辺州にも問い合わせたところ、果たして同じ強盗団はこれまでにも数え切れないほど銀行を襲っていた。手口は様々だが、被害を受けた銀行の担当者は口々に「良い人そうだった」「幸せそうな人に見えた」と証言する。警察とマスコミはこの強盗犯たちに、「黄昏ギャング団」というあだ名を付ける。 州を越境する事件だったため、間もなく捜査権限はFBIに移管。ギャング団のリーダーは、フォレスト・タッカーという男だとわかった。だが彼らは、その後も犯行を重ねていく。

 実在した銀行強盗フォレスト・タッカーを、ロバート・レッドフォードが演じる実録犯罪映画。彼の恋人をシシー・スペイセク、強盗仲間をダニー・グローヴァーとトム・ウェイツ、彼を追う刑事をケイシー・アフレックが演じるという超豪華キャスト。派手なアクションがあったり、込み入ったミステリーや、手に汗握るスリラー仕立てというわけでもないのだが、それでいながらこれだけ楽しめるのは、このキャスティングによるところが大きいと思う。映画には物語で見せるもの、映像の派手さで見せるものなど、いくつかのパターンがあるのだが、この映画は「役者と芝居を見せる映画」だと思う。レッドフォードは『明日に向って撃て!』(1969)や『スティング』(1973)の時代から何度も、「アウトローだが悪党ではない爽やかなナイスガイ」のような役を何度も演じている。今回の役はその集大成でもあり、これが俳優引退作と言われているのも納得できる。

 古今東西の多くの映画は、ひとりの主人公が事件を通して変わることを描く。それは精神的な成長であり、生き方の変化だ。恋愛映画で恋人たちが結ばれる、結婚するというのも、そうした変化だろう。逆に主人公が死んでしまうという映画もある。これも変化だろう。しかし本作は「変わらない男」の物語だ。主人公のフォレスト・タッカーは、何があっても生き方を変えない。変えられないのだ。何度刑務所に入っても、そのたび脱獄して同じように強盗稼業を続ける。思いがけず恋人が出来ても、年を取って体が動きにくくなっても、彼は生き方を改めない。そもそも改める気がない。捕まっても懲りない。こうかいしていない。彼は悪人ではなく、弱い人間でもない。犯罪は悪い人間が起こす、さもなければ弱い人間が起こすという前提からすると、タッカーはじつに不思議な人間だ。その不思議さを、レッドフォードが魅力的なキャラクターに仕立てて楽しげに演じている。

(原題:The Old Man & the Gun)

伏見ミリオン座(ミリオン2)にて
配給:ロングライド
2018年|1時間33分|アメリカ|カラー|シネマスコープ
公式HP: https://longride.jp/saraba/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt2837574/

OLD MAN & THE GUN
OLD MAN & THE GUN

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