ダンスウィズミー

8月16日(金)公開 全国ロードショー

いろいろ残念なミュージカル・コメディ

 東京の大手企業に勤める鈴木静香は、姉に押し付けられた姪っ子の子守で遊園地へ。そこでインチキ臭い老催眠術師マーチン上田に出会い、安っぽい催眠術をかけられる。「あなたはミュージカル女優です。音楽が流れると、歌ったり踊ったりしないではいられません!」。学校の出し物でミュージカルに出演するという姪っ子に催眠術はかからなかったが、どういうわけかこの術が静香にだけはしっかりかかってしまった。社内プレゼンの席で、静香はふいに流れ出した音楽に反応して盛大に歌い踊り、周囲を啞然とさせる。このままでは仕事にならない。仕事どころか日常生活にも差し障る。もとに戻るには、マーチン上田に催眠術を解いてもらうしかない。しかし借金まみれのマーチンは遊園地から姿をくらまし、気ままな地方巡業の旅に出てしまう。静香はマーチンの小屋でサクラをしていた千絵を仲間にひっばりこみ、マーチンを追いかける旅に出る。その期限は1週間だ!

 矢口史靖の新作だが、僕はあまり乗れなかった。オープニングで宝田明(マーチン上田)が「Tonight(星の降る夜に)」を歌う場面では少しだけワクワクしたのだが、これも数秒後には残念な気持ちに変わってしまう。東宝ミュージカルのスター俳優だった宝田明も、さすがに80歳を過ぎて声量が衰え、音程が不安定になっている。その不安定で力のない歌声が、この映画の先行きを暗示しているような気がしたのだ。残念なことに、ここで芽生えた不安な気持ちは的中する。その後に登場するミュージカルシーンのどれもが、このオープニング以上にかなり微妙なのだ。端的に言ってしまえば、すべての場面が貧乏くさい。お金がかかっていない。ミュージカルの「キッチュな非現実感」を茶化して笑うはずの映画なのに、登場する歌唱シーンの多くがミュージカルになりきれていないのは致命的だ。もちろんこれは、ミュージカルをどう定義するかにもよるのだけれど。

 この映画で「ミュージカル」と呼ばれているのは、物語の途中で突然音楽が流れて、登場人物が歌ったり踊ったりするものだ。このシュールさについては、物語の序盤で静香が自ら語っている。ならば映画の中では、静香の定義したようなミュージカルを作らなければならない。だがこの映画の中では、そうした場面が少ないのだ。序盤のオフィスでの場面、レストランでの「狙いうち」、クライマックスのステージなどは、劇中で定義されたミュージカルになっている。でも車の中でカーラジオに合わせて歌ったり、ストリートミュージシャンが公園で歌ったり、ダンスバトルで踊ったり、街頭のスピーカーから流れてくる唱歌を口ずさんだり、結婚式の余興で歌を披露することは、この映画で定義された「非日常的なミュージカル」ではないだろう。こうした場面が楽しくないわけではない。しかし映画のコンセプトとしては、チグハグだろう。期待していた分だけ落胆も大きい。

ミッドランドスクエアシネマ(シアター3)にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
2019年|1時間43分|日本|カラー
公式HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/dancewithme/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9529640/

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