エイス・グレード/世界でいちばんクールな私へ

9月20日(金)公開 ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国ロードショー

美しくもなく輝いてもいない思春期!

 ケイラは中学生ユーチューバーだ。定期的にネットに動画をアップして、同世代の子供向けにポジティブなメッセージを送っている。だがそれを学校で知る人はほとんどいない。パソコンのカメラの前で笑顔を振りまき饒舌な彼女も、学校では無口な子、目立たない子、イケてない子で通っているのだ。学内の人気者たちを横目で見ながら、積極的にその中に入っていけないことに自分でイラだっている。怒りをぶつける相手は父親だ。自分の事が心配なのはわかるが、あれこれ口を出したり干渉したりしてくる父親にも、ケイラはイライラが止まらない。そんな彼女が、クラスの人気者ケネディの母親から、プール開きパーティに招待された。ケネディ本人は明らかに乗り気じゃない。それがわかるから、ケイラもこの招待に応じるのは気が重い。しかしこれを断れば、自分がクラスのはぐれ者であることを自分で認めるようなもの。ケイラは勇気を振り絞って会場に乗り込んだが……。

 タイトルの『Eighth Grade』は「8年生」のこと。アメリカではこれが中学校最後の年になるというのだが、それをそのままカタカナにしても、日本人には意味がわからずピンと来ない。これは邦題の付け方にもう少し工夫が必要だったと思う。とは言え映画はなかなか印象的な作品に仕上がっている。主人公のケイラは「特別じゃない子」だ。だが自分では、自分自身を特別だと思っている。動画を配信して、同じ年頃の子供たちに親切で前向きなアドバイスをして、感謝されたと思っている。でも「自分は特別だ」という根拠のない自身の一方で、彼女は自分が「特別じゃない」どころか、むしろイケてない、地味で目立たない子であることも強烈に自覚している。プール開きのパーティに参加したケイラがプールサイドに出て行くときの表情は、まるで処刑場に引き出される死刑囚のように真っ青だ。その時、全世界が彼女に向かって敵意をむき出しにしているようだ。

 子供は誰でも、世界が自分中心に回っていると思っいる。両親や周囲の人に愛されている人ほど、そうした万能感を持っているに違いない。しかしこれは子供にとって当然の、健康で健全な万能感だろう。子供は誰でも「あなたは何でもできる」「今は出来なくても、やれば出来る子だ」と言われて育つ。子供は可能性の塊で、こうした言い方は別に嘘じゃない。でもそうした万能感を、大人になっても持ち続けている人はいない。誰しも人生のある時期に、「自分には何でも出来るわけじゃない」「いくら努力しても出来ないことがある」と思い知るのだ。これもまた、人間にとってきわめて健康で健全なことだと思う。この映画は、そんな子供の成長を描いている。出来なかったことが、出来るようになることだけが成長ではない。出来なかったことが、やはり自分には無理だと知るのも成長なのだ。ただしこの成長は、嬉しくも楽しくもないし、他人から称賛もされないのだけれど。

(原題:Eighth Grade)

ミッドランドスクエアシネマ2(シアター14)にて
配給:トランスフォーマー
2018年|1時間33分|アメリカ|カラー|1.85 : 1|ドルビー・デジタル
公式HP: http://www.transformer.co.jp/m/eighthgrade/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt7014006/

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