ブルーノート・レコード/ジャズを超えて

9月6日(金)公開 Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開

名門ジャズ・レーベルの過去と現在。そして未来……

 ブルーノート・レコードは、1939年に創立された名門のジャズ専門レーベルだ。創設者のアルフレッド・ライオンはニューヨークの貿易会社に勤めていたが、子供時代からのジャズ好きが高じて小さなレコード会社を立ち上げた。翌年にはドイツ時代の親友だったフランシス・ウルフもこのレコード会社に合流し、ニューヨークの最新ジャズを次々に録音していった。ライオンとウルフはユダヤ人で、ナチス政権によるユダヤ人迫害を逃れてきたのだ。ブルーノートでは様々なミュージシャンが録音し、その中には今でもジャズの名盤とされるものが多い。1930年代末にアルバート・アモンズとミード・ルクス・ルイスのブギウギからスタートしたレーベルは、1940年代にはビバップの名盤を数多く生み出し、1950年代のハードパップを経て、1960年代にリー・モーガンの「サイドワインダー」が大ヒット。だが皮肉なことに、これが同レーベルの身売りにつながる。

 熱心なジャズファンでなくとも、ブルーノートの名前ぐらいは知っているだろう。(同じ名前のジャズクラブもあるが、これは本作で取り上げられたジャズレーベルのブルーノートには関係がないらしい。)マイルス・デイヴィスやセロニアス・モンク、アート・ブレイキー、ジョン・コルトレーンなど、今ではジャズの伝説となっている数多くのミュージシャンたちが、ブルーノートでの録音を残している。映画はブルーノート・レコードで行われている現在の録音風景を入口に、80年に渡るレーベルの歴史をたどっていく。「サイドワインダー」のヒットが重荷となり、少人数の家庭的な経営を行っていたレーベルは大手レコード会社の傘下に入る。だがヒットを望む大手では、かつてのような自由な音楽作りは難しく、創設期以来のメンバーは次々レーベルを離れていく。ジャズが音楽シーンの主流から外れたこともあり、1970年代の終わりにブルーノートは録音を休止する。

 1970年代までのブルーノートの歴史は、ジャズの教科書や名盤カタログに載っている物語だ。勉強にはなるが、現在との直接的なつながりはさほどない。だが1980年代に復活したブルーノートの物語は、没落した名門ブランドを新経営陣がいかに蘇らせたかという「ブランド価値再創出」の物語になる。これはとても面白いのだが、ヒップホップへの取り組みやノラ・ジョーンズの登場など、いくつかの話題が断片的に語られるだけで、レーベル誕生を語る「ジャズ好き亡命ユダヤ人たちの物語」のような大きなドラマがないのは残念だ。ただしそれをやると音楽業界やビジネスの話にはなっても、この映画が持っている音楽映画としての面白さは失われてしまっただろう。ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターなど、ブルーノート黄金期を知るミュージシャンが登場して往年の様子を語る場面は見もの。映画全体が、いまを生きる偉大なレーベルへの賛歌になっている。

(原題:Blue Note Records: Beyond the Notes)

センチュリーシネマ(センチュリー1)にて
配給:EASTWORLD ENTERTAINMENT
2018年|1時間25分|スイス、アメリカ、イギリス|カラー、モノクロ
公式HP: https://www.universal-music.co.jp/cinema/bluenote/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6106822/

Blue Note Records: Beyond the Notes
UMG Recordings, Inc. (2019-08-29)

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