アド・アストラ

 9月20日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

冒頭の大落下は大画面で観る価値あり!

 近未来の地球。宇宙から降り注ぐ電流サージによって、世界中で大規模な事故や火災などが増えていた。サージに起因する事故に遭いながら九死に一生を得た宇宙飛行士のロイ・マクブライドは、上官から秘密の任務を命じられる。それは人類を危機に陥れているサージを止めるため、海王星まで行けというものだった。今から16年前、地球外生命体を探す「リマ計画」というプロジェクトがあり、旅立った飛行士たちはそのまま消息を絶った。参加者全員死亡と見られていたが、じつは参加者のうち、ロイの父クリフォードだけがまだ生きており、海王星付近で活動しているらしい。この活動が、結果としてサージの原因になっている。ロイの任務は父を説得して、地球に連れ帰ることだ。彼は民間人旅行者の身分で月基地に渡り、さらに火星の中継基地に到着する。だが心理テストで任務から任務から外されそうになったことで、ロイは強引に探査ロケットに乗り込んだのだが……。

 ブラッド・ピット主演のSFスリラー映画で、ビジュアルは『2001年宇宙の旅』(1968)、ストーリーは『地獄の黙示録』(1979)、語り口は『ツリー・オブ・ライフ』(2012)などのテレンス・マリック作品といった雰囲気。物語自体は単純だ。ひとりの男が遠い目的地まで旅をして、目的を達した後は、元の場所に再び戻ってくるというロードムービー。旅の過程に様々なエピソードが散りばめられているが、それぞれのエピソードに何か関連があるわけではない。映画冒頭の大落下は本作最大の見どころのひとつだが、このエピソードはその後のどんなエピソードともつながらない。月面での襲撃も、航路途中で出会ったヒヒも、火星着陸時のトラブルも、その後のトラブルも、前後のエピソードから完全に独立している。しかし映画を観ていても、これらのエピソードを通り過ぎていく主人公の心境変化がまったく見えてこない。目的地での出来事も同じことだ。

 主人公は筋金入りの宇宙飛行士として、いついかなる時も冷泉沈着を心がけ、どんな場合も精神的に動揺しないキャラクター設定になっている。この映画はそんな彼が、人間らしい感情を取り戻していく過程を描こうとしているらしい。映画冒頭で主人公に愛想を尽かして出て行った恋人が、映画の最後に再び現れるのはその象徴だろうか。だがそこに至るまで、無感情の主人公にまったく感情移入できないというのは、この映画の大きな弱点になる。何しろ主人公が感情を見せないのだから、感情移入のしようがないのだ。といって、地球外生命体探索のためすべてを捨てる主人公の父にも、やはりまったく共感も同情もできない。この父も息子も、ちょっとおかしいのだ。狂っている。僕は観ていないのだが、この父親のキャラクターは、ジェームズ・グレイ監督の前作『ロスト・シティZ/失われた黄金都市』(2016)に登場する探検家の姿が重なり合っているのかもしれない。

(原題:Ad Astra)

109シネマズ名古屋(シアター9)にて
配給:20世紀フォックス映画
2019年|2時間3分|アメリカ|カラー|2.39 : 1
公式HP: http://www.foxmovies-jp.com/adastra/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt2935510/

トゥ・ザ・スターズ (『アド・アストラ』オリジナル・サウンドトラックより)
Deutsche Grammophon (DG) (2019-09-20)
売り上げランキング: 3,652

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中