宮本から君へ

9月27日(金)公開 新宿バルト9ほか全国ロードショー

個人的なトラウマ漫画の劇映画化

 文具メーカーの若い営業部員・宮本浩は、仕事にも恋にも全身でぶつかる熱血漢。そのせいで仕事でも何度かトラブルを起こし、同じだけ周囲の人たちに助けられてきた。そんな彼が、年上の女性・中野靖子と付き合い、結婚することになる。両親に彼女を紹介するため実家に帰った際、食事中に気分が悪くなって席を立つ靖子。宮本の母は彼女が妊娠していることを察して、このことで息子に小言を言う。「どうしてあなたは何も説明してくれないの。靖子さん妊娠してるのね。みんな聞いたわよ」。「聞いたって、何を、どこまで聞いたんだ!」。いきなり血相を変える宮本。じつは靖子の妊娠には、彼女と宮本以外にほとんど誰も知らない秘密があったのだ……。宮本がまだ靖子ときちんと付き合い始める前、彼女の部屋を始めて訪ねたときのことだ。そこにやって来たのは、靖子の元恋人・祐二。宮本は祐二の前に立ちふさがり、「靖子は俺の女だ。俺が守る!」と啖呵を切った。

 新井英樹の「宮本から君へ」は、雑誌「モーニング」に連載されていたときに読んでいた。文具メーカーに勤める新人営業マンの熱っぽくて汗臭い奮闘が、当時社会人になったばかりの自分にも何かしら響くものがあったのだと思う。嫌いじゃなかったし、傑作だとも思う。ところが僕はこのマンガから、途中で脱落してしまう。主人公の恋人になった中野靖子の身に起きた「ある事件」があまりにも衝撃的でおぞましく、僕にとってトラウマになってしまったのだ。この事件に主人公が自分なりの落とし前を付けるまでは一応追いかけた記憶があるが、僕はこの作品が最終回を迎える前に投げ出して、その後はまったく見向きもしなかった。この作品はどういうわけか、昨年になって連続テレビドラマ化された。僕はかつて夢中になっていた作品がドラマ化されたことを嬉しく思いつつ、この作品が自分に植え付けたトラウマに向き合うのが嫌でスルーしていた。で、映画版の公開だ。

 映画版はテレビ版のその後を描いているのだが、要するに僕のトラウマになった「ある事件」を巡るエピソードだ。原作は出来事を時系列で描いていたが、映画は時間を入れ子状にして、宮本が靖子と結婚を決めて互いの両親に挨拶に就く場面からスタートする現在のシーンと、そこにいたる「ある事件」の顛末を交互に描いていく。回想シーンは時間の節約になるのがいい。同時にこれは、「ある事件」を観ながらも、その後の主人公たちの歩みが観客にあらかじめ知らされているという意味で、上手く事件の衝撃を中和してくれる構成になっていると思う。僕はこの映画版を観てやっと「宮本から君へ」の呪縛から逃れられたと思う。そういう意味でも、この映画を観て良かった。物語としては駆け足すぎる部分もあるが、映画としてはこんなものか。蒼井優は素晴らしいし、池松壮亮もすごかった。そして、ピエール瀧。この俳優が、いつか映画に復帰できることを願って止まない。

ミッドランドスクエアシネマ2(シアター14)にて
配給:スターサンズ、KADOKAWA
2019年|2時間9分|日本|カラー
公式HP: https://miyamotomovie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9575164/

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