イエスタデイ

10月11日(金)公開 全国ロードショー

世界にもしビートルズがいなかったら

 バイトをしながらミュージシャンを目指しているジャックは、小さなライブハウスやイベントで演奏を続けていても、鳴かず飛ばずでなかなか目が出ない。幼なじみでマネージャーのエリーがいくら励ましてくれても、売れないという事実に挫けそうになる。そんな中、ジャックは自転車で交通事故に遭う。幸い命に別状はなかったが、前歯2本と愛用のギターが犠牲になった。退院したジャックを励まそうと、エリーや友人たちが集まる。新品のギターもプレゼントしてくれた。「せっかくだから、なにか一曲歌えよ」とうながす友人たちに、ジャックは何気なくビートルズの「イエスタデイ」を一節。ところが誰もその曲を知らない。「なんだ、隠し球かよ。すごいいい曲じゃん!」「今までそんな曲を作ったのを黙ってたのね!」「お前、天才だな」「ええっ? これ、ビートルズだぜ?」「ビートルって、自動車か?」。彼の入院中に、世界からビートルズが消えてしまったのだ!

 ダニー・ボイル監督の新作は、映画全編にビートルズの楽曲が散りばめられたミュージカル映画。ミュージカル映画にはいろんなパターンがあるのだが、歌手や演奏家、場合によっては作曲家を主人公にした映画というのもたくさんある。このパターンは劇中で主人公が突然歌ったり踊ったりするわけではないので、ミュージカル映画にアレルギーがある人にも違和感がない。最近の映画だと、『ボヘミアン・ラプソディ』や『アリー/スター誕生』(2018)がこのパターン。本作『イエスタデイ』は紛れもなくミュージカルだが、ミュージカルであることを感じないまま観ている人も多に違いない。これはミュージカル独自の荒唐無稽な演出が好きな人には物足りないが、この映画は設定の荒唐無稽さで、その物足りなさを補って余りある。映画全編にあふれるビートルズ楽曲への愛情。映画を観ればサントラが、そしてビートルズのオリジナル楽曲が聴きたくなること請け合いだ。

 この映画は「ビートルズの楽曲は誰が聴いても間違いなく名曲で芸術作品!」と言い切ってしまう。ビートルズの曲の凄さがわからないのは、音楽に素養が無いニブチンばかりなのだ。主人公の友人たちは、「イエスタデイ」を少し聞いただけでその凄さがわかった。音楽がわかる人たちだったのだ。そしてミュージシャンのエド・シーラン(本人が出演)は、この世に忽然として登場したビートルズ楽曲に対する最大の理解者となる。ビートルズの存在しないもうひとつの世界が仮にあったとして、そこに突然ビートルズが現れたとしても、実際にこんなに受けるものだろうか? と、ことさらビートルズの熱心なファンというわけではない僕は思ったりもするのだが、映画にあふれるビートルズ愛がそうした疑問を強引に押さえつけて有無を言わせない。主演のヒメーシュ・パテルは初めて観る顔だが、エリー役のリリー・ジェームズがじつにチャーミング。表情がいちいち良いのだ。

(原題:Yesterday)

ミッドランドスクエアシネマ2(シアター13)にて
配給:東宝東和
2019年|1時間56分|イギリス|カラー|2.39 : 1
公式HP: https://yesterdaymovie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8079248/

イエスタデイ (オリジナル・サウンドトラック)
Polydor Records (2019-06-21)
売り上げランキング: 56

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