去年マリエンバートで

10月25日(金)公開 YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

過去の迷宮に捕らえられた人々

 周囲から隔絶された広大なリゾートホテル。そこに集まるのは、夜会服で着飾った富裕層の人々。彼らは取り立てて何をするでもなく、演劇を観たり、ゲームをしたり、他愛のないおしゃべりをして時間を過ごしている。そのホテルを訪れた男Xは、美しい女Aと出会い恋をする。だが翌年同じホテルを訪れたXは、他人行儀な振る舞いを見せるAに戸惑うばかり。XはAに向かって、ふたりの間に何が起きたのかを語っていく。少しずつ、過去を思いだしていく女。だがその記憶は、男の記憶とどこかですれ違う。ふたりの間に、一体何が起きたというのか。ふたりの間に立ちふさがるのは、Aの夫であるM。彼は妻とXの関係を知ってか知らずか、ゲーム版の上の勝負でXをさんざんに打ち負かす。Xは何度もMに挑むがまるで歯が立たない。XはAをホテルの庭園に連れ出した。夜の庭園には、ふたりの他に誰もいない。恋人たちの回想は、いよいよこの問題の核心へと迫っていく。

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帰ってきたムッソリーニ

9月20日(金)公開 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか公開

徹底した二番煎じが清々しい

 第二次大戦中のイタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニ。イタリアが1943年に降伏した後もイタリア社会共和国の指導者として戦争を指揮したが、1945年4月にパルチザンに身柄を拘束されて処刑される。享年61歳。ところがその男が、突然現代に蘇る。「ムッソリーニのそっくりさん」である彼を発見したのは、テレビ局の売れない下っ端職員カナレッティだ。彼は手始めにムッソリーニを連れてイタリア中を歩き、各地で人々の暮らしや政治に対する不満の声を拾って動画サイトにアップする。ムッソリーニはあっという間に動画サイトの人気者。となれば次は、地上波テレビだ。テレビ局はムッソリーニを、毒舌のスタンダップコメディアンとして売り出す。ムッソリーニは持ち前の弁舌の才能で、あっという間に視聴者の心をわしづかみにしてしまった。だがカナレッティは自分の拾ってきた男がムッソリーニに似た芸人ではなく、本人であることに気付いてしまう。

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真実

10月11日(金)公開 全国ロードショー

是枝監督最新作は舞台劇のにおい

 フランスを代表する大女優ファビエンヌ・ダンジュヴィルが、自伝「真実」を発行する。それを記念して、アメリカで働いている娘リュミールもフランスに戻ってくる。夫のハンクと、娘のシャルロットも一緒だ。久しぶりの再会を喜び合う母と娘だが、家族の関係はどことなくぎこちない。この家族は、必ずしも関係良好というわけではないのだ。その原因の多くは、ファビエンヌの強烈な自我によるものだった。「真実」と題された自伝も、リュミールが読めば嘘ばかり。彼女にとって何よりも不満なのは、自伝の中に大好きだった伯母が登場しないことだ。女優としての才能で、母ファビエンヌ以上だったと評されることもあった伯母は、不幸な事故で若くして亡くなった。なぜ母の自伝には、彼女のことが載っていないのだろうか? リュミールは知っている。伯母は事故ではなく、自ら命を絶ったことを。そしてその原因を作ったのが、目の前にいる母に他ならないことを……。

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