CLIMAX クライマックス

11月1日(金)公開 ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開

こうしてパーティ会場は地獄に変貌した!

 オーディションで集められた若いダンサーたちが、海外公演に向けた合宿練習の打ち上げパーティを始める。合宿所の広いダンスフロアがパーティ会場になり、この日は少し羽目をはずしてもおとがめなし。だがダンサーたちの様子が少しずつおかしくなる。誰しも感情と行動に歯止めがきかなくなり、ささくれ立った言葉と暴力が交錯する事態に。誰かが飲み物にドラッグを入れたらしい。でも誰が、何のために? ドラッグで抑制が効かなくなった若者たちは、ヒステリックな声上げながら飲み物に手を出さなかった仲間が怪しいと決めつける。だがそれで問題が解決するわけではない。アルコールとドラッグで酩酊状態になった若者たちが生み出すカオス。その中で女性マネージャーの連れて来た幼い子供が、ドラッグ入りの飲み物に口を付けてしまう。母親は子供を安全な場所に隔離するため配電室に閉じ込めるが、これがさらなる事態の悪化を招くことになってしまうのだ……。

 ギャスパー・ノエ監督の新作は、1996年に起きた実際の事件をモデルにしたというグロテスクな青春群像劇。もっともこれが実際にと来たことだと真に受ける必要はない。何しろ物語の中では参加者全員がヘベレケに酔ったあげく、ドラッグで意識が飛んでいるのだ。実際そこで何が起きたかなど、当事者にすらわかりっこない。切れ目なしのワンカットで撮影された導入部のダンスシーンは見事だが、これはダンサーたちの連帯や結束力の強さを表現している。だがこの抜群のチームワークが、映画の中であっという間に崩壊して行く。この映画の潔さは、その崩壊の局面だけを緻密に描いていく点だ。ダンサーたちがオーディションで集められ、それなりの練習期間を経てこのチームにまとまったということは、冒頭のオーディションテープと、ダンスシーンの後の台詞で簡単に触れられるだけ。その後はひたすら、崩壊に向かってまっしぐらに、加速を付けて物事が進んで行く。

 映画の見どころは、登場人物たちの感情表現が、そのまま身体的な動作へとダイレクトに結びつく部分にある。映画導入部のダンスシーンもそのひとつだが、感情抑制のタガが外れた若者たちは、腹が立てば相手に殴りかかり、苛立てば声を荒らげ、パニックを起こせば金切り声を上げ、絶望すれば自らを傷つける。出演しているダンサー役の若者たちはほとんどが演技初心者らしいが、それでもこれだけ迫力のある映画になっているのは、ここにある芝居には演技巧者が得意とする感情の屈折がないからだろう。人間は悲しいときに笑って見せたり、怒りを感じながら相手に優しく接することもある。それを演技で表現するのが腹芸だが、この映画にはそれを見せる余地がほとんどない。映画導入部の会話劇の部分にはそれを感じされる部分もあるが、ひとたびドラッグ入りのサングリアで感情のリミッターが外れると、あとは地獄の底まで一直線だ。他人ごとなら、地獄もまた楽しい。

(原題:Climax)

伏見ミリオン座(劇場1)にて 
配給:キノフィルムズ、木下グループ 
2018年|1時間37分|フランス、ベルギー|カラー|スコープサイズ|5.1ch 
公式HP: http://climax-movie.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8359848/

Climax (Original Motion Picture Soundtrack)
Editions Milan Music (2018-09-14)
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