アイリッシュマン

11月15日(金)公開 全国ロードショー

デ・ニーロがスコセッシ映画に帰ってきた!

 これはひとりの男の回想だ。トラック運転手のフランク・シーランは、車のエンジン不調で立ち往生しているところで、たまたま通りがかった男に声をかけられた。立派な身なりの男は、手が油まみれになるのも厭わずエンジンに手を突っ込み、不調の原因をピタリと言い当てる。これがフランクとラッセル・ブファリーノの出会いだった。積み荷の横領で小遣い稼ぎをしていたフランクは、雇い主に訴えられたところを組合の弁護士に助けられ、彼の紹介でラッセルと再会する。すっかり意気投合した二人は家族ぐるみの付き合いをはじめる。ラッセルは裏社会で名の知れた顔役のひとりで、いつしかフランクはその右腕として、頼まれた「ペンキ塗り」の仕事を手掛けるようになった。「ペンキを塗る」は裏社会の隠語で、人を殺すことだ。そんな中でラッセルが自分の仕事仲間としてフランクに紹介したのが、全米トラック運転組合「チームスター」の会長ジミー・ホッファだった。

 マーティン・スコセッシの新作で、主人公の「アイリッシュマン」ことフランク・シーランを演じるのは、スコセッシ映画に久しぶりに登場したロバート・デ・ニーロ。なんと『カジノ』(1995)以来24年ぶりのコンビ再結成だというから驚く。ほぼ四半世紀ぶりなのだ。一方ホッファを演じるのは大ベテランの名優アル・パチーノ。彼がこれまで、どういうわけかスコセッシ作品にまったく出演経験がなかったというのも意外だ。普通はここまで縁がないと一生すれ違いになっても不思議ではないが、そうならずにこうして接点ができたのは、映画ファンにはとても嬉しい話だ。だがこのふたりも、今回フランクのボス、ラッセル・ブファリーノを演じたジョー・ペシにはかなわない。2000年代に入ってからセミリタイア状態の彼は、この映画のために9年ぶりにスクリーンに戻って来た。その堂々とした貫禄で、デ・ニーロとパチーノが演じる男たちを手玉に取ってみせる。

 映画は上映時間3時間半。マフィア映画としてのクライマックスは、主人公が語る『ジミー・ホッファ失踪事件の真相」にあるのだろう。だが映画はその後がまた長い。ホッファが消えた後も、フランクやラッセルの人生はまだまだ続く。しかも若き日の、血湧き肉躍るような冒険はもう存在しない。盛りを過ぎた老人たちが、刑務所や老人ホームでただ死ぬのを待つばかりの日々。映画のエピローグとして、蛇足にもほどがあると考える人は多いに違いない。しかしこの長い長い後日談こそ、この映画を通してスコセッシ描きたかったものなのではないだろうか。人は何かのために生きるのではなく、ただ生きている。好むと好まざるとに関わらず、無駄に長く生かされている。自分の求める何かのために生き、その命を散らせた有名無名の男たちは、その死の瞬間まで自分で生きているという実感があったに違いない。だが最晩年のフランクは、何の充実感もないままただ生きている。

(原題:The Irishman)

イオンシネマ名古屋茶屋(スクリーン2)にて 
配給:Netflix 
2019年|3時間29分|アメリカ|カラー|1.85 : 1 
公式HP: https://www.netflix.com/jp/title/80175798 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt1302006/

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